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さぶれ
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Novels by さぶれ

婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

29歳の幼稚園教諭・眞子は、出会いのない毎日に焦りを感じていた。最後の独身友人も婚活アプリで結婚が決まり、眞子も半ば強引にアプリに登録されてしまう。やり取りを始めた4人の男性の中で、眞子の心を動かしたのは、どこか謎めいた魅力を持つ彼。モンスターペアレントに心が折れそうな中、優しく寄り添う彼に眞子は惹かれていく。しかし、彼には思いもよらぬ秘密が隠されていて――。 婚活アプリから、危険な恋が始まる予感。
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Chapter: 第2話・会ってみない? その9
 それから暫くは平和に過ごした。羽鳥聖也君のお母さんからの攻撃も無く日々の業務に追われた。私は年長担当なので、そろそろ八月に開催されるお泊り保育の準備や内容をしっかりと落とし込みしなくてはいけない。大体テンプレートどおり大きな予定・行事は決まっているけれど、晴天の場合のメニュー、雨天の場合のメニュー、それぞれを考えておかなくてはいけないし、やることたくさん!  それに加えて今月末からプール授業が始まる。全クラスのローテーションは組み終わっているから、園のプール準備をして、来月は七夕まつりがあるから、配布用の笹や飾り付け、景品の準備などをやる。 おまつりに出店するジュース・お茶などのドリンク販売の店、キャラクターのおめんを販売する店、くじ引きができる店、駄菓子等のお菓子を売る店、的当てやヨーヨー釣り等ができる露店、さくら幼稚園は色々な模擬店で子供たちを楽しませる。近隣住民の小学生も遊びに来てくれて(大体OBか通園の御兄弟が多いけど)お店の準備が結構大変だ。  そのため、年間で大きなイベント毎にお手伝いをしてくれるお母様を募集し、必ず一人一回はどこかのお手伝いを割り当てる。特に大変なのが七夕まつりと運動会。やってくれる人が少なくて、じゃんけんで負けたお母さんが当番に当たる。子供たちと一緒にお店を回ったり、運動会は子供たちの活躍を見たいものね。気持ちはわかる。 そして、来月の七夕まつりはお手伝いに羽鳥恵里菜さんが当番に当たっている。立候補ではなく、じゃんけんに負けたのだ。しぶしぶ仕方なくの当番なので、どんな文句を言われるかわからない。ああ。考えるだけで胃が痛い。 まあでも、今から来月の事を考えて憂鬱な気分にならなくてもいいかな。  今日はI.Nさんから、来週の日曜日にレイクタウンアウトレットの最寄り駅で午前九時に待ち合わせしよう、会えるのが楽しみ、とメッセージが入った。 もうすぐかぁ。いよいよI.Nさんと会うんだなぁ。  どんな人だろうと思っていると、もう一通メッセージが来た。I.Nさんではなさそうだ。このアイコンは…。――こんばんは、Mさん元気? ちょっと仕事合間に連絡してみたよー。最近食欲
Last Updated: 2025-04-21
Chapter: 第2話・会ってみない? その8
  ――ジョーダンだよ。ホントは都内。Mさんの旅費、俺に請求すんのかよ(笑)(玄)――こっちだってジョーダンですから(◍•ᴗ•◍)(M)――そっか。それはよかった。じゃ、明日また頑張ろう。嫌なヤツのことは考えるだけMさんの貴重な時間が勿体ない。(玄)――そうですね。玄さん、ありがとうございます。また、メッセージしてもいいですか?(M)――モンペに攻撃されたら、愚痴聞いてやるから連絡しておいで。俺の店に飲みに来てくれるなら大歓迎(玄)――営業うまーい(*´◒`*)(M)――まあね。また今度誘うから。じゃお休み。(玄)――はい、おやすみなさい。(M) 楽しいやり取りをして、Love Seaアプリを閉じた。  玄さんのお陰で、気分が楽になった。  他愛もないやり取りにここまで心が癒されるなんて。  アプリで知り合た人なら、どんなに仕事の愚痴を言っても素性がバレて困ることもないし便利。普段だったら絶対に出来ない。だからこういったアプリの利用が急増しているのかな。 誰でも人には言えない悩みのひとつやふたつ、時にはそれ以上、抱えているもの。  玄さんって、一体どんな人なんだろう。ぶっきらぼうな感じだと思っていたけれど、意外にユーモアある人だった。会ってお喋りしてみたいな。 I.Nさんは、犬のことを話すと嬉しそうにメッセージが返ってくるから犬好きの模様。  ゆうた君とは、最初はアウトドア中心の話に盛り上がったけれど、最近は他愛もないメッセージを送り合っている。友達にメッセージを送る気軽さがあって、見ているテレビ番組の話とか、お笑いの話とか、本当に内容もない話が多いけれど、お互いそれを楽しんでいる。  Takaさんは特に食べ歩きの話が多いかな。まあ、最近Takaさんはお仕事が忙しいみたいだから、メッセージの回数は少ない。一度に長文を送ってくれるから、返信に困るから回数は少ない方が有難いと思っている。  玄さんとは初めて長くやり取りしたけれど、楽しかった。心が疲弊している時だから、余計にそう思っただけかもしれないけれど。
Last Updated: 2025-04-20
Chapter: 第2話・会ってみない? その7
 帰宅してから自分の為だけに食事を何も作る気になれず、自宅の近くのコンビニに立ち寄り、売れ残ったために隅に追いやられた小さなお弁当を買った。 売れ残り――私の中で結婚を意識する年齢はとっくに過ぎてしまったのに、恋人になってくれそうな男性の知り合いもいない。このお弁当はまるで私のようだと嘆きたくなった。 とぼとぼと重い足取りで家に帰ると、より一層徒労感に襲われた。もう疲れてしまった。なにもしたくない。 大好きなお風呂を沸かす気力も無く、ソファーの背もたれ部分に頭を乗せて唸った。お風呂は今日はお休みして、シャワーにしよう。 先に何か口にしようと思い、エコバックから取り出した売れ残りのお弁当を見る。正直あまり食欲はないけれど…残すのは忍びない。食べてあげなきゃ可哀想だ。まるで私だもん。 自分で自分を更に追い込むような事を思いながら、淋しいので見たくもないテレビを点けて冷めたお弁当を食べていると、傍に置いていたスマートフォンが鳴った。Love Seaからのメッセージ受信のお知らせ着信だ。――こんばんは、元気?(玄) たったひとこと、玄さんからのメールだった。彼からのメールはこれが初めて。相変わらずの愛想無い。でも今は却ってこれがいい。 ――いいえ、元気じゃないです。今、打ちひしがれてます(☍﹏⁰)。(M) お行儀悪いけれど、一人だからいいやと思って、お弁当を食べながら玄さんのメッセージに返信した。他愛もないやり取りで誰かと繋がっていると思うだけで、今は心細くて淋しいと思う気持ちが満たされる気がした。それにこの重く辛い気持ちを、誰でもいいから愚痴りたい。 そうなると、顔も知らないアプリで知り合った人というのは、今のこの状態に丁度いい人材だ。――そっか。大変だったんだな。同じだ。俺も打ちひしがれているトコ。(玄) あら。打ちひしがれ仲間?――どうしたのですか?(M)――色々あってさ。ちょっと誰かと話したい気分で声掛けた。(玄) それ、気が合う!――お仕事大変だったのですか?(M)――まあね。Mさんも仕事で嫌事あった?(玄)――うん。びっくりするほの嫌事が!(M)――俺と一緒(笑)(玄)――どんなことが?(M)――俺、飲食店やってるんだけど、新規オープンした店にお客が来なくて。結構ヤバイと思ってビラ配りに行ったら、酔っ払いに絡まれて暴
Last Updated: 2025-04-20
Chapter: 第2話・会ってみない? その6
 へこむ気持ちにふたをして、大林先生と一緒に遊んでいる子を見た。予想どお残っている子は三崎竜(みさきりゅう)君で、私の担任するそら組の子供のひとりだった。 彼のお母さんはいつもお迎えの時間が遅い。午後七時前に迎えがあった事はほとんどない。というのも、ホテルのレストランでお仕事をされているらしく、この時間は食事時で忙しいようで、思うように帰ることができないのだとか。  お迎えが七時半を過ぎる事は日常茶飯事だが、シングルマザーだと聞いているので、あまり強く言えない。 私はクラス担任なので、勤務時間が午前八時から午後五時までと決まっている。預かり保育の子供たちを最後の七時まで持つことは時間的に園が許可できないため、私は最後まで残った事は無い。  なので聞くところによると、お母さんはいつも申し訳なさそうに迎えに来るらしい。こちらも『いつでもいいよ』と言ってあげたいけれど、夜間保育が充実しているわけでもなく、二十四時間体制の保育園でもないのだ。 さくら幼稚園は、あくまでも認定こども園 (※認定こども園とは・・・・内閣府が認可した施設で、保育園は「両親が共働きなどで日中子どもを保育できない時に預かってくれる場所」、幼稚園は「教育の補助等を含め、任意で小学校に入学するまで通う場所」となる。 認定こども園は、幼稚園と保育園が一体になった施設であるため、内閣府が4~11時間の間で保育を認めている。この間で園の定めた時間を保育可能とされている。1号・2号・3号認定の子供が通えて、保育料も収入によって変動する)  であるため、それ以上の保育サポートは体制が整っていない・定められた保育時間を超過してしまうため、手を貸す事が出来ない。  それをしてしまうと、結局私達職員の肩にその負担がのしかかる。現に目の前の大林先生がそうだ。本当ならもう帰宅準備ができる筈なのに、それができない。 幼稚園勤務がブラックだと言われてしまうのは、給料が薄給であり、常に職員が不足している。更に保護者との密な関り・人間関係も様々であり、複雑である。そして勤務時間も長い。土日は休めるが交代制で、運動会や音楽会等が入れば絶対に休めない。それが、ブラックだと言われてしまう所以(ゆえん)であるのは否めない。 幼稚園はブラック企業ではないのに。子供たちを教え、一緒になって成長できるのは、なににも代
Last Updated: 2025-04-19
Chapter: 第2話・会ってみない? その5
 「いかがされましたか?」『いかがされましたか、じゃないわよ! 一体どういうつもりかって聞いてるの!』 こういう人は要件を端的に言ってくれない。どうしたのかと聞けば、そんなこともわからないのか、と喚き散らして罵ってくる。理由も大抵理不尽な事ばかり。今回はなにかな。早くも胃が痛みだした。『私がこうやって電話をかけてきている理由もわからないなんて!』 予想どおりだ。要件を言ってくれないから、なにに対して怒っているのか理解できない。「申しわけございませんが、羽鳥さんが怒っていらっしゃる理由がわからないので、教えていただけませんか?」 『今日持ち帰ってきた王冠よ!』「王冠ですか…」 思わず呟いてしまった事に、彼女はますます逆上する。『まああっ、まだわからないの!? うちの聖也ちゃんに、わざと小さい方を掴ませて! 昌磨君のもらった方が大きかったのよ! 明らかな差別よ!!』 この人はなにを言っているのだろう。王冠は同じ型紙で同じ大きさで作っているのに、見た目だって殆ど同じなのに。「お言葉ですが羽鳥さん、昌磨君だけ大きなものを作ったとか、そんなことはありません。この王冠は私の手作りですが、同じパターンから作りました。私のモットーは子供たちには平等に接する事で、常にそうであるよう心がけています。誤解です」 私は必死に訴えた。羽鳥さんは、どうしてこんな勘違いをしてしまうのだろう。昌磨君の王冠の方が大きいなんて、そんなことはあり得ない。どうしてそう思ってしまわれるのか不思議で仕方ない。『平等!? ふざけんじゃないわよぉっ!!』 耳をつんざくような金切り声がしたので思わず受話器から耳を少し離した。それでも十分彼女の声は聞こえる。電話口から漏れる大声が職員室に響いた。『いったい、どこをどうしたら平等だなんて偉そうに言えるの!?』「あの、羽鳥さん、手作りの王冠ですから、大きさを変えたりするようなことはありません。どこがおかしかったのでしょうか?」『まだそ
Last Updated: 2025-04-19
Chapter: 第2話・会ってみない? その4
  誕生日会当日。 六月生まれのお誕生日の小倉昌磨君と、羽鳥聖也君を教卓の前に呼び、手作りの王冠を被せた。おめでとう、とお祝いをして、私がピアノを弾き、みんなでハッピーバースデーの歌を歌った。 誕生日会は滞りなく進行し、本日の給食もお誕生日用の特別給食で、みんなでわいわい楽しく頂いた。お誕生日の特別メニューは、『ポテト』や『唐揚げ』や『ハンバーグ』等、特に子供たちに人気のおかずが中心に提供される。 どうしても通常の給食は栄養バランスをメインに考えられているから、味が苦手で残してしまう子もいるけれど、特別メニューは誰も残さない。普段から頭を悩ませ、美味しくて栄養のある給食を作って下さる職員の方々には、感謝しかない。 子供たちの笑顔が見る事が出来て、私は幸せ。 そんな給食の時間を終え、一歳児や二歳児のお昼寝も終わり、通常保育の子供たちは午後二時のお迎えも終わり、大きな事件や子供たちが怪我をする事もなく、何事も無く時間が過ぎた。 しかし事件は、夕方遅くに起こった。 預かり保育の当番だったので退勤時間の午後五時まで、指定の教室で子供たちを見ていると、園に電話がかかって来たのだ。夕方は職員が減るので、電話対応できる人が少なく、長いコール後に取る事も多い。人手が少ないのだ。 職員室に居ないので、随分長いコールが鳴っているな、と思っていたら、さくら幼稚園主任の大林先生が慌てて教室内に入って来た。「清川先生っ、すみませんがお電話対応頂けますかっ。大変です!」「どうされましたか!?」 血相を抱えて飛び込んで来た大林先生に声を掛けた。御年五十歳のベテラン教員の大林先生は、この園の主任を務めていらっしゃる。 彼女が黒いおかっぱの髪を振り乱しながら私に言った。「羽鳥聖也君のお母様からお電話で、清川先生に代われと大変な剣幕で…」「羽鳥さん?」 思わず眉根を寄せ、険しい顔を作ってしまった。また、聖也君のお母さんだ。 彼女からなにを言われるのだろう。心当たりがなにもない。
Last Updated: 2025-04-18
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