生まれ変わった私は、元夫の臓器を提供した
長年の親友である梅子は末期がんだと告げられ、最期の願いは浩一の妻になることだった。
浩一は私の手を取り、諭すように言った。
「戸籍上の書類なんて形だけのものさ。俺の心はずっと雅子のところにあるんだから」
息子の大輔まで私を責め立てた。
「お母さんがお父さんと離婚しないから、梅子おばさんは何十年も影で苦しんできたんじゃないか」
梅子の治療費のために、大輔は留学の夢を諦め、さらには婚約者との縁を切って梅子の娘と結婚すると言い出した。
必死に懇願する父子の姿を見つめながら、私は迷うことなく頷いた。
「梅子は私の大切な親友だもの。もちろん認めるわ。
ただし、条件があるの。家と車と預金は私の物。息子は君たちが引き取って」
区役所戸籍課で、二人が嬉々として婚姻届を提出する様子を見ながら。
私は静かに微笑んだ。私には前世の記憶があったのだから。
梅子のがんは偽りだった。でも、浩一の末期がんは紛れもない事実だった。
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