愛は空虚に、妄念は砕け散る
山頂にたどり着いたとき、私は低体温症になってしまった。
命をかけて私を守ると誓った二人の幼馴染は、私を一瞥することもなく、それぞれ別のことに忙しくしていた。
一人は持っている服をすべて中村香織に着せるのに必死で、もう一人は自分の体温で中村香織を温めるのに夢中だった。
私は寒さで心臓が悲鳴を上げ、助けを求めて彼らにすがりついた。
しかし、彼らの返事は怒りのこもったものだった。
「紗也乃!こんなときにまで嫉妬するなんてどうかしてる!寒いなら走って体を温めろ!」
「帰ったらダウンジャケットを百着買ってやるから、今は絶対に香織と争うな!」
救助隊が到着し、私はなんとか一命をとりとめた。
病院で一週間入院している間、彼らは一度も見舞いに来ることはなかった。
その代わり、SNSでは中村香織の誕生日を祝う投稿に忙しそうだった。
幼馴染として十数年一緒に過ごしてきたはずなのに、ドライバーの娘の微笑みには到底敵わなかった。
私はお父さんに電話をかけた。
「井上との結婚、私、承諾します!」
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