All Chapters of 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話。

 レイナに会いたくないとか、アカデミーに行きたくないとか。この国の皇妃になる者とは思えない考え方だろうか。エルザは、レイヴァンの婚約者なのに。 まるでエルザから避けているようだ。情けない。もっと自分に自信を持てたら、こんな嫌な思考にならずに済むのに。 そんなモヤモヤな気持ちを抱えたまま、レイヴァンと芝居を見に行く日を迎える。  侍女達は、張り切って支度をしてくれた。有名デザイナーが、デザインしたダークネイビのドレス。Aラインの肩だしでスリットになっていて大人っぽい。「ちよっとセクシー過ぎない?」 と侍女達に言うが「せっかくのデートだから、それぐらいの方がいいと思います」と言われた。そうだろうか? 芝居は夕方からなので、それまでに支度をして、レイヴァン様の待つ馬車に向かった。 すでにレイヴァンは、支度を終わらせて待っていてくれた。黒と白が入った宮廷服がよく似合う。「お待たせして申し訳ございません」「いい。行くぞ」 レイヴァンはそう言うと、エルザに手を差し伸べてくれた。 エルザはその手を受け取り、馬車に乗り込んだ。そして馬車を走らせる。 向かい側に座っているのだがレイヴァンは、あれから一言も話してくれない。 目すら合わせてくれない。やっぱり似合わなかったのだろうか? セクシー過ぎて、下品だと思われたのだろうか。もし、そうなら着替え直したいぐらいに恥ずかしくなってくる。「あの……このドレス。やっぱり似合わなかったでしょうか?」 我慢ができずに、レイヴァンに聞いてみた。するとレイヴァンはエルザをチラッと見てくれたが、すぐに目線を戻してしまう。 やっぱり………とエルザは落ち込む。「私は、君に似合わないと思ったことは一度もないが」「えっ?」 その言葉に驚き、レイヴァンの方を見る。しかし、レイヴァンは窓の方を見ていた。「レイヴァン様……今、何て?」「……何も言っていない」 無表情にさっきの言葉を否定してきた。でも……確かに。 しかし皇太子であるレイヴァンの放った言葉は絶対だ。本人がそう言った以上は、否定はできない。エルザは「そうですか」とだけ答えた。 そうしている間に劇場がある建物についてしまった。馬車が停まると、レイヴァンが先に降りて手を差し伸べてくれた。その手を取り降りる。 大きな劇場で何千人の人が観賞ができそうだ。連れ
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第12話。

 観賞する場所は皇族や貴族専用のVIPルーム。個室になっており、豪華なソファーが置いてある。 ステージが一望ができる最高の特等席だ。エルザはレイヴァンの隣に座り、お芝居を見る。今回のお芝居は恋愛ものだった。 一国の皇女が身分の低い商人と恋に落ちて、駆け落ちをする。しかし悲しいことに、陰謀と商人の裏切り。そこで芽生える本当の愛とは?  お芝居を見ていると何故だか主人公である皇女と商人に感情移入してしまう。そこまでして皇女を手に入れたかった商人……いや。敵国の皇子。愛を選んだ皇女。 まるで自分を見ているような錯覚になる。エルザが、この主人公の皇女だったら、そこまでしてでもレイヴァンを選んだだろうか? レイヴァンもエルザを、そこまでして手に入れたいと思ってくれただろうか? ハンカチで涙を拭きながらチラッと隣を見る。レイヴァンは無表情で、ジッとお芝居を見つめていた。集中している。 退屈そうにしているのかと思っていたから意外だった。 どう感じているのだろうか? しかし、レイヴァン様は商人にみたいな気持ちにはならないだろう。自分のことを、そこまでして愛してくれるとは思えない。 そう思い直すと、悲しい気持ちになってくる。すると、またレイヴァンに気づかれてしまう。「どうしたんだ?」「あっ……いえ。何も」 エルザは、慌てて目線を逸らすと下を向いた。ジッと見ていたことを気づかれて恥ずかしい。 それよりも胸の辺りが、チクチクして痛い。自分の言葉に傷ついたのかもしれない。 しかし、その時だった。レイヴァンは、エルザの手を握ってきた。 エルザは驚いてレイヴァン見る。こちらを見ようともしない。しかし恋人繋ぎのように指を絡めてくる。 指先から伝わってくる、あたたかい体温。ドキドキと高鳴り、心臓の振動も伝わりそうだ。 どうして手を繋いできたのか分からない。だが、その行為が嬉しいと思う。 まるでレイヴァンも同じ気持ちでいるのではないかと、錯覚を起こしそうになるほどに2人だけの空間になった。 芝居が終わり、エルザ達は外に出る。辺りは暗くなっていた。「この後は、どうしましようか?」「それなら食事をすると……」 レイヴァンが、何か言いかけた時だった。遠くの方から大きなが聞こえてきた。「レイヴァン様~」 猫のような甘ったるい声で呼ぶのは……。振り向くとや
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第13話。

 エルザは、その言葉に驚いた。何故、次は自分の番だと思ったのだろうか? 婚約者の自分を差し置いて。戸惑うエルザにレイナは、こちらを見てニコッと笑いかけてくる。「少しぐらいいいですよね? エルザ様」「えっ……でも」(これは、どういう意味? 何故、私に聞くの?)「皇妃になるエルザ様なら理解してくれると思います。だって、私さっきまで国のために祈って参りましたの。もうマナの使い過ぎでお腹ペコペコ。レイヴァン様と一緒に食べるぐらい許して下さるでしょう?」 エルザは、その言葉に啞然とする。それだとまるで、国に対して働いてきた聖女として敬えと言っているようなものだ。 もし嫌だと言うものなら、聖女に対する敬意が足りないと周りから揶揄される。 皇妃になりたいのなら、これぐらい我慢しないと……。 ドレスの裾を握り締める。すると、レイヴァンはレイナの肩を抱いて、引き寄せてきた。「いちいちエルザに許可を取る必要はない。決めるのは皇太子の私だ。エルザ、今から彼女と食事をしてくる。君は先に戻っていろ」「は、はい。分かりました」 レイヴァンは、そう言うとレイナを抱き寄せたまま行ってしまった。 エルザは1人だけだけ取り残されることに……。 レイナは、少し振り向くと不敵な表情でクスッと笑っていた。その表情を見た時、ゾクッと背筋が凍った。(今のはせい……? しかし何故、こんなことに? 私は婚約者なのに) これだとまるで、形だけの婚約者だ。最初から政略結婚でもあるが、これはあまりにも酷いだろう。 楽しみにしていた、お芝居が一瞬で台無しになってしまう。 こんなはずではなかったのに……。エルザは涙を流しながら、そこに立ち尽くしていたのだった。胸がズキッと痛むのを感じながら。 その後。どう帰ったか覚えていない。帰宅すると、入浴も着替えもせずにベッドに潜り込んだ。声を殺しながら泣く。 ビビアンとルルは状況を察したのか、エルザを1人にしてくれた。 散々泣いた後、エルザは疲れて眠りについてしまったのだった。レイヴァンの考えていることが分からないまま……。
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第14話・ご懐妊。

 それから3ヶ月が経った頃。もうすぐ魔導育成アカデミーの卒業式が迫っていた。18歳になれば、成人だと認められる年。大体の生徒は卒業後に自分に向いたところに選ばれたり、就職する。今年はエルザ達の番だ。 そしてレイヴァンは、卒業後は皇太子としての教育を終わらせ、公務を中心になる。そこで未来の皇帝としての引き継ぎをして即位するのが流れだ。 そうなるとエルザも婚約者としてではなく皇妃として嫁ぐのが決まりとなっている。 しかし、そんな時にジュリアナ伯爵令嬢からお茶会の招待状が届いた。 エルザは、そのお茶会に違和感を覚えた。何故自分にも送ってきたのだろうか? ジュリアナ伯爵令嬢は、レイナに対して崇拝している1人である。つまり、エルザに対して、あまりいい印象がない。「どうしますか? お断り致しましょうか?」 侍女のルルが心配そうにエルザにそう言ってきた。何が目的か分からない。 しかし最後のところに、こんなことが書かれていた。『聖女であるレイナ様から大切な報告があるそうです。是非ともエルザ様に来て頂けると幸いです』と……。(レイナ様から大切な報告? それは何かしら?)ここまで言われると出席しない訳にはいかないだろう。それこそ何を言われるか分かったものではない。「……いいわ。出席すると伝えて」「分かりました。それより大丈夫ですか? 何だか顔色が悪いようですが?」「大丈夫よ。ちょっと胃がムカムカするだけで、すぐに良くなるわ」 最近、体調が優れない。もしかして風邪でもひいたのかもしれない。 大切な時期だから気をつけないと……。 レイヴァンにでも移してしまったら大変なことだ。「そういえば……レイヴァン様は?」「公務の方で忙しいみたいですね。最近は、こちらにもお見えになっておりませんし、多忙なのでしょう」「……そう」 ルルの言っている通り、最近はこちらに来ることはなかった。卒業に公務のこともあるから、忙しいと思っていたので気にしないようにしていたが。(何だろう……何だか嫌な予感がするわ。気のせいだといいのだけど) しかし、その嫌な予感は当たる事となった。 数日後。ジュリアナ伯爵令嬢のお茶会に出席する。ジュリアナ伯爵令嬢の屋敷に行くと庭園に華やかに飾りづけしたテーブルが設置してあった。テーブルにはたくさんのケーキやクッキーなどデザートが並べて
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第15話。

 あまりにも衝撃の一言にエルザが持っていたフォークを地面に落としてしまった。 どういうことだろうか? 聞き間違い? レイナは、パートナーにレイヴァンが誘ってくれたと言っていたが、婚約者はエルザだ。パートナーが婚約者以外と行くなんて。「まあ、レイヴァン様はレイナ様をパートナーに選ぶなんて素敵だわ。2人はお似合いだと、ずっと思っていましたの」「皇太子のレイヴァン様と聖女のレイナ様。まるで絵に描いたような美男美女ですわ」しかし他の令嬢達は大盛り上がり。するとレイナは少し困ったような表情をする。「でも私は迷いましたの。レイヴァン様とエルザ様とは婚約者だし、申し訳なくて」「何を言っているのですの。レイナ様は聖女様なのだから、エルザ様が譲るべきです」「そうですわ。相手は悪役令嬢と悪名高いお方。レイヴァン様がレイナ様を選ぶのも当然のことですわ」 そう言いながらエルザが居るのも関わらずクスクスと笑っていた。 すでに私は蚊帳の外にされていた。まるで最初から相手にされていなかったかのような言い分で。 エルザは頭が真っ白になる。これは、どういうことだろうか? 手がガタガタと震えてくる。胃が余計にムカムカして気持ちが悪い。「この様子だと、婚約者がレイナ様になるのも時間の問題ではないかしら?」「そうね……レイヴァン様も、そのつもりでパートナーを選んじゃなくて?」 エルザは我慢ができなくて思わず立ち上がる。 そして、その場を後にする。バタバタと走り、人気のない場所まで向かう。「ぐっ……ゴホッゴホッ」 エルザは、あまりの気持ちが悪さに、そのまま吐いてしまう。 吐いても、まだ気持ち悪さは変わらない。むしろ余計に胃がムカムカする。「エルザ様!? どうなさったのですか?」 一緒に来て待機していた護衛騎士のライリーが慌てて、こちらにきてくれた。「……大丈夫……ちょっと気持ちが……」「エルザ様!?」 必死に平気なふりをしようとするがあまりの気持ち悪さに、倒れてしまう。 次に目を覚ました時は『ホワイトキャッスル』にある自分の寝室だった。ベッドで眠っていた。(さっきのお茶会は夢?……それもそうよね。あんなの、ありえないことだわ。レイヴァン様がレイナ様にパーティーのパートナーに誘うだなんて。私という婚約者が居るのに) 起き上がろうとすると、ルルとビビアン
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第16話。

「どうされましたか? エルザ様」「どこかご気分でも悪いのですか? お医者様をお呼びしましょうか?」 ルルとビビアンは心配そうに声をかけてくれる。しかしエルザは溢れる涙を止めることができなかった。(私はどうしたらいいの?) エルザは、その場で泣くことしかできなかった。 しばらく塞ぎ込んでいるとレイヴァンが自らエルザのところまで足を運んでくれた。「目を覚ましたようだな? 気分はどうだ? 話なら医師から聞いている」 恐る恐るレイヴァンの顔を見ると複雑そうに眉にシワを寄せていた。 どう見ても妊娠したことに対しての喜びようではない。まるで本意ではなかったかのような表情だった。もしかして妊娠さえも望んでいない?エルザは顔がこれ以上、見ることができなくなって、すぐに下を向いてしまう。「あ、あの……私、妊娠しました。レイヴァン様の子です」「あぁ……そうだろうな。君は私以外の男に抱かれたことはないからな」「この子は男の子かもしれません。次期の皇太子候補になるでしょう」「……何が言いたい?]「えっ……?」 低く冷たい言葉に思わず顔を上げる。すると、その表情に愕然とした。 レイヴァンは酷く冷たい表情になっていた。エルザはゴクッと恐怖で唾を吞む。「で、ですから……その」 エルザの体がガタガタと震え上がる。少しでも機嫌を損ねると、突き放されると思うような重苦しい雰囲気に。「……そうだ、丁度いい。君に話しておくことがあったのだった。卒業パーティーは悪いが、君のパートナーにはなれそうにない」「えっ……な、何でですか!?」 パートナーにはなれないって……まさか!?「……先約ができてな。話は以上だ」 レイヴァンはそう言うと背中を向けて行こうとする。ま、待って。「もしかして、その先約って、レイナ様ですか!?」 言ったらいけないと思ったのに、咄嗟に口から出てしまった。 そうしたらレイヴァンは動きが止まり、こちらを振り返ってくれた。しかし、その表情は変わらず冷たい。「……だとしたら?」「そ、そんなのおかしいですわ。私は婚約者です。パーティーは……婚約者と同席するのが習わし。それなのに、婚約者でもないレイナ様と出席されるなんて。それに、私のお腹にはあなたの子が……」 本来なら絶対にあってはならないこと。周りの方々にどう説明するだろう? (それに…
last updateLast Updated : 2025-04-05
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第17話。

 最悪な出来事が起きてから数日が過ぎる。卒業パーティーが行われた。その前に、アカデミーの卒業式もあったのだが、それは無事に終わることができた。 エルザは、つわりが酷かったのでパーティーのみ参加することに。 本当はパーティー自体も出席したくない。パートナーが居ない状態で行ったら、周りに何を言われるか分かったものではない。きっと変な噂が立ち嘲笑われるだろう。 しかしエルザはサファード家の公爵令嬢。皇族主催の卒業パーティーなら代表として出席しないとならない。婚約者なら、なおさらだ。 気分が優れない。つわりもだが、気持ち的にも……。ルルとビビアンは支度を手伝ってくれたが、何だか落ち着かない様子でソワソワしている。この前のことがあり、心配しているのかもしれない。主として大丈夫だと言いたいところだが、エルザにはそんなことを言える余裕はなかった。 自分さえも、これからどうなるのか分からない状態だ。お腹の子のこともある。 せめて婚約者として相応しくしなければ……。 必死に自分に言い聞かせながら皇宮に向かった。ダンスホールでは、すでにたくさんの貴族や卒業生徒達で賑わっていた。 しかし、婚約者であるレイヴァンを連れていないエルザに気づくとコソコソと陰口を言ってくる。「まあ、見ました? エルザ様ったら、婚約者なのに一人で来ているわよ」「やはり、あの噂は本当だったのね。レイヴァン様はレイナ様に夢中なのでしょう?」「これだと、婚約者が代わるのも時間の問題よね」 エルザにも聞こえるような声で言ってくる。そんなことは言われなくても……。 すると、周りがざわめき出した。エルザは、その方向を見る。 注目の相手はレイヴァンとレイナだった。 レイヴァンにエスコートされて出席していたが、その姿は恋人同士みたいだ。 しかもレイナの着ているドレスは、この間、エルザがレイヴァンとお芝居の時に着ていたドレスと同じだった。 彼女が着ると、少し幼さが残るが、また違った美しさがある。 何よりも聖女とは思えない色気が漂わしていた。周りだけではなくエルザも思わず息を吞む。「まぁ、なんてお似合いなのかしら。まるで本物の恋人みたいだわ」「なんて美しいのかしら。聖女ってよりも女神様みたいだわ」 周りの令嬢達は、2人を絶賛する。しかしエルザの心は穏やかではない。(いや……それより
last updateLast Updated : 2025-04-05
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第18話。

 急に何を言い出すのかと思えば……何故そんなことに? エルザは啞然とする。そもそも聖女であるレイナを殺そうなんて思うはずがない。「まだ認めない気か? なら、証明してみせよう。刺客を連れてこい」 レイヴァンがそう言うと、騎士達が怪我をしてボロボロになった黒マントを羽織った男を連れてきた。体格のいい男だったが見たこともない男だ。「この男に身に覚えがあるだろう? この刺客が聖女であるレイナの部屋に忍び込み、襲ったそうだ。ギリギリに助けられたが、腕に傷を負った。その傷は自身の治癒能力で治せたからいいものを……これは重罪だぞ」「ち、ちょっと待って下さい。私はそんなことはしておりません。それに、その男も見たこともありません」「白々しい。この男がすべて自白したぞ。エルザの指示で、すべてやったと。その証拠に君が報酬に渡した指輪を持っていた。これは、サファード公爵家が持っている鉱山しか収穫ができない『虹色のダイヤ』だ」 エルザに見せてきたのは紛れもなく『虹色のダイヤ』の指輪だった。(あれは、私の無くした指輪だわ!?) ダイヤはサファード公爵家が持っている鉱山しか収穫ができない。 虹色に輝いて見えるのは、サファード公爵家が持っているマナが入っているからだ。 輝くばかりに美しく貴重な宝石のため、高額で買い取られる。公爵家の中でも身分や財力があるのは能力の他に、こういう理由もあった。 デザインからしてもエルザのものだと間違いないだろう。 最近、指輪がないと侍女達が探していたのに、何故あの男のもとにあるのだろうか?「証拠が出てきて言葉にならないか? では言おう。聖女に対しする数々の愚行。そして殺害未遂。どれも国を脅かす重罪だ。よって、君との婚約を破棄とする。そして国外追放とする」「えっ……?」 レイヴァンの言葉に、エルザの心は粉々に砕いていく。 婚約破棄……しかも国外追放だなんて。「あ、あんまりです。私は、そんな愚かな行為はしておりません」 エルザは必死に違うと訴えかけた。全身が恐怖とショックで震え上がる。 するとレイナはレイヴァンの腕に手を絡ませて、目をウルウルとさせる。「レイヴァン様。それはあまりにも酷いと思いますわ。きっと嫉妬で自分の心を病んでしまったのでしょう。国外追放ではなく幽閉でどうでしょうか? それなら、自分の過ちを反省ができますし、
last updateLast Updated : 2025-04-05
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第19話。

 会場の外に出されると、そこにライリーが待ち構えていた。 彼は悲しそうな表情でエルザを見ていた。ライリーも皇族の意志には逆らえない。 もしかしたらエルザのことを疑っているかもしれないと思った。しかし強引な騎士の手からエルザを引きはがしてくれた。「エルザ様に対して無礼だぞ。この方は私が連れていく」「えっ……?」「し、しかし。この者は重罪を犯した者。速やかに牢獄に」「二度も言わん。この方は私が連れていく」 ライリーがそう言うと、エルザを連れ出してくれた。さっきの騎士達と違い、気遣ってくれる。そのまま用意された馬車に乗せられた。「あ、あの……どちらに?」 彼も一緒に乗り込んだが、黙ったままだった。答えたくないのだろうか? 何処に連れて行く気だろう。幽閉と聞いたから皇宮から離れた塔だろうか? しかし、そうなると逆方向だ。どんどん皇宮から離れていく。静まる馬車の中で、エルザはレイヴァンのことを考えていた。 どうしてこんなことに……。 初めてレイヴァンにお会いして以来、エルザは彼を忘れたことはなかった。皇妃として厳しい教育にも耐えて、相応しくなろうと心がけてきたのに。 確かに悪役令嬢とは言われていたけど……恥じる行為はしていない。なのに、何で誰もそれを信じてくれないのだろうか。(お腹の子も居るのに。私はどうすれば良かったの?)そう思うとエルザの目尻には自然と涙が溢れてきた。(ダメ……ライリーが居るのに) 涙が一滴こぼれると、目の色が七色に光り、身体もキラキラと輝きを出した。ライリーは、その姿を見ると、驚いた表情をしていた。それもそうだろう。 こんな姿はレイヴァンしか見せたことがない。「これが……サファード公爵家の能力なのか? なんと……美しい」 早く戻さないと。エルザは必死に涙を止めようする。しかし絶望した感情を止める方法を知らない。涙がさらに溢れてくる。 するとライリーはエルザを抱き締めてきた。エルザは驚いてしまう。「ら、ライリー!?」「泣かないで下さい。大丈夫です……私が居ます。それに。あなたにはまだ、たくさんの味方が居ますから」「た、たくさんの……味方?」 どういう意味だろうか? こんな状態で味方なんて居るの? すると馬車は止まった。もう……着いたのだろうか? ハッとしたのか、慌ててエルザから離れるライリー。耳まで
last updateLast Updated : 2025-04-12
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第20話。

 まさかと思ったが十分ありえることだろう。 そこの主人だったエルザが強制的に婚約破棄されたのだ。その使用員だった、この人達も例外でない。場合によったら共犯だと疑われてもおかしくはない。 そんな……ここの人達には何も関係ないのに。 エルザが動揺していると、トムソンがニコッと微笑んできた。「ほら、君達。エルザ様はお疲れだから早く部屋に案内してあげなさい。入浴の準備も忘れないように」「あ、はい。かしこまりました。さあ、エルザ様……こちらに」「えっ? ちょっと」 ルルとビビアンに強引に案内された。部屋まで案内してもらうのだが、何だか違和感があった。「これって……」 その違和感は部屋に入ってすぐに分かった。『ホワイトキャッスル』の造りが、とにかく似ているのだ。「これは……私の部屋だわ!?」 屋敷の造りが少し違っているものの、家具の種類からインテリアまで正確に似せてある。言わないと区別が出来ないほどに。 エルザの部屋は好きな色である白をモチーフにしてある。白はこの顔に似合わないと言われていたが、せめて部屋ぐらい好きな色にしたかったからだ。「これは……どういうことなの?」 エルザは驚いていると。ルルとビビアンが得意げそうな顔をする。「安心して住んで頂けるようにと、殿下の指示でご用意致しました」「えっ……?」 レイヴァン様の……指示?「環境を急に変えると不安になるだろうから、全て『ホワイトキャッスル』と同じようにするようにと仰せつかっています」「レイヴァン様が!? どうして……」 婚約破棄したばかりの自分に、こんなことをしてくれるのだろうか? せめてのご慈悲だろうか。「殿下は、何か考えがあるのではないでしょうか?」 戸惑うエルザにビビアンは、優しい口調でそう言ってきた。「……考えって?」「はい。この部屋もそうですが、殿下はエルザ様のことを無下にしていないと思います。私達をこちらに派遣した時でも、普段と同じように接しろと仰っておりました。それは、つまりエルザ様の事を『次期皇妃』だと思って慕っている私達の配慮だと思っておりますわ」 じゃあ何故、捨てられたのだろうか?「だったら、何故私を婚約破棄したの? 婚約者では無くなった私に、皇妃になんてなれるわけがないじゃない?」「エルザ様……それは」「もうやめて……私は捨てられたのよ。これも
last updateLast Updated : 2025-04-12
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