ホテルで荷物を整理し終えた頃には、雨もすっかり止んでいた。清香はバッグを手にレストランへ向かい、まどかと再会した。二人はしっかりと抱き合い、久しぶりの再会を喜びながら、お互いの近況を語り合った。晄夜から財産の半分を得たと聞いた瞬間、まどかは目を見開き、まるで皿でも飲み込みそうな表情になったかと思うと、そのまま清香に飛びついた。周囲の視線などお構いなしに、大声で叫び出した。「きゃああああああ! うちの親友が富豪になってるーっ!? やばい、今あたしこの大金持ちの太ももにしがみついてるんだけど!? これで残りの人生、安泰じゃん!」清香は慌ててまどかの口を押さえ、まわりの客に会釈して謝りながら、急いで彼女を個室へと連れて行った。ようやく静かになったところで、まどかは目を輝かせながら小声で尋ねた。「で、ほんとに振り込まれたの?」「うん、でも、使うのがちょっと怖い。なんか、落とし穴があるような気がして」その弱気な返答に、まどかは思わず手を握り、説得を始めた。「はあ? 何それ。堂々としなよ! あんたの正当な権利だってば。晄夜がくれたもんでしょ? 無理に結婚したわけでもないし、気にせず使っちゃいなよ!」その言葉に、清香の表情も少しずつ柔らかくなっていく。まどかは満足げにメニューを掴み、ろくに目を通すこともなく、店員にパシンと手渡した。「このお店で一番高いオーストラリア産ロブスター、ちょうだい!」大仰に注文を済ませた彼女は、得意げに顎を上げた。「どう? さっきの私、なかなかそれっぽくなかった?」清香は笑いながら両手で親指を立てた。「完璧だったわ。ただ……レシートが来た時、うちの中村社長はその余裕顔を保てるのかしら?」「ちょ、清香!? 今日のご飯、あんたのおごりでしょ?えっ、もしかして割り勘!?」そんなやり取りに笑い声がこだまし、楽しい時間が流れていった。食後、清香が会計のために店員を呼んだその時——背後から、不意に聞き覚えのある嫌味な声が飛んできた。「へえ、こんなところで清香に会うなんてねぇ」二人が振り向くと、階段を下りてきたグループが目に入った。見覚えのある顔ぶれは大学時代の同級生たち。そしてその中心には、以前と変わらず華やかに着飾った瑤子がいた。まどかはすぐに耳元でささやいた。
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