お正月に帰省して、大学の同級生たちが集まることになった。すでに何人もが結婚していて、子ども連れの人もちらほら。 私と隼人がまだ結婚していないと聞いて、幹事の萩原治(はぎわらおさむ)は不満げに言った。 「いつになったら俺たち、二人の披露宴に呼ばれるんだ?」 「まだ決めてない」 「10月1日」 ほぼ同時に口を開いた。隼人は眉をひそめ、あからさまに不機嫌な顔で私を見てくる。疑問と困惑が入り混じった視線だった。 そりゃそうだよね。だって、私たち、結婚の話なんて一度もしてないんだから。 実は2年前に一度だけ私から切り出したことがあった。その時、彼は「仕事が忙しいから、落ち着いたら考える」って言ってた。それ以来、私は何も言わなかったし、彼もそのまま忘れたふりをしていた。 私たちの答えが食い違ったことで、周囲はざわつき、視線が集まった。 「え、まだちゃんと話してないの?隼人、男ならちゃんとリードしないと」 萩原くんが笑って場を和ませようとした。私は彼の視線を振り切って、真っ直ぐ萩原くんたちの方を向いて、にっこり笑って宣言する。 「10月1日に結婚するよ。よかったら来てね」 場が一瞬静まり返り、それから萩原くんが我に返ってお祝いの言葉をかけてくれた。ついでに隼人に茶化すように言う。 「隼人、秘密にしてた?けっこうケチだなあ」 「ほんとほんと、俺たちを呼ぶ気なかったのか?」 男友達が冗談混じりに笑いながら言う。隼人は愛想笑いを浮かべて耐えてたけど、私はまるで他人のように静かに座ってた。横目で見れば、彼は何度も私の方を見ていた。何か言いたそうに。 でも、私にはもう説明するつもりはなかった。というか、その必要もない。 話題は自然と学生時代の恋バナへと移っていく。 「大学の新歓パーティーのとき、結月(ゆづき)が真っ赤なワンピース着ててさ。まるで咲き誇るバラみたいで、俺ら全員、目が釘付けだったよな」 「そこで隼人が『俺、絶対あの子を落として、結婚する!』って宣言したんだよな」 「俺たち、全員で隼人の恋を応援してたっけ」 「こんだけ長く付き合って、ようやくゴールインだもんなぁ。ほんと、よかったよ」 隼人の友達は、当時の思い出話に花を咲かせていた。 けれど、肝心の隼人は、どこか上の空だった。何か言いかけて
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