「いらっしゃいませ!」 喫茶とまりぎで。 海が元気よく声を上げた。「あらあら海ちゃん、今日も元気いっぱいね」「あはははっ、ありがとうございます濱田さん」「ほんと、海ちゃんが来てから、ここの雰囲気が明るくなったわ」「そんなそんな。褒めても何も出ないですよー」 照れくさそうに笑う海。 そんな彼女に微笑みながら、浩正〈ひろまさ〉が濱田に声をかける。「いらっしゃいませ濱田さん。スタッフを褒めてもらって嬉しい限りなのですが……前は暗かったですか」「ああ浩正くん。ごめんなさいね、そういう意味じゃないのよ。ここはいつ来ても和やかで楽しくて、私たちにとって憩の場所なんだから。海ちゃんが来てくれて、もっともっと楽しい場所になったってことよ」「はははっ、ありがとうございます」「海ちゃんのおかげで青空〈そら〉ちゃんも楽しそうだし。ほんと、いい人が入ってくれてよかったわ」「そんなー。濱田さん、褒めすぎですってばー」「うふふふっ。ほんとのことだから、照れなくても大丈夫よ」 客と海のやり取りをパントリーで眺めながら、誰に話すともなく大地がつぶやいた。「なんだよこの状況……」 * * * 大地と海が過去を打ち明けあったあの時、海は言った。 あんたを幸せにしてみせると。 その言葉にどんな意味が込められているのか、その時の大地には分からなかった。 全てに絶望し、人を信じることを放棄した自分には、この世界で生きる資格がない。 そして自分にとって最も大切な存在、青空〈そら〉の幸せの最たる障害。それが自身であり、一刻も早く取り除きたいと思っていた。そして事実、行動を起こした。 しかしその時、海と出会ってしまった。 海の死を見届けるまで、俺は死なない。 彼女と交わした約束を、大地は後悔していた。 当の海が、まさかここから復活するとは思ってもなかった。 確かに
Last Updated : 2025-04-18 Read more