ワゴン車の後部ドアが開き、スタッフが手際よく車椅子の利用者を下ろしていく。 大地と青空〈そら〉、浩正〈ひろまさ〉が手を貸すと、「今日もよろしくお願いします」と笑顔を向ける。 海はどうしていいのか分からず、その場に立ちすくんでいた。そんな海に気付き、大地が声をかけた。「海はそこで待ってて。要領も分からないだろうし、準備が出来たら声をかけるから」 そう言われてほっとする気持ちと、何も出来そうにない自分に苛立ちを覚えた。 車椅子なんか、学生時代の体験授業で少し触った程度だ。どう動かしていいのかも覚えてない。下手に手伝って、事故でも起こしたら大変だ。 大地の言う通り、今自分に出来ることはない。そう思い、準備が整うのを待った。「今日は中山さんも来られてるんですね」 最後に一台、異彩を放つストレッチャー型の車椅子がゆっくりと降ろされた。そこには中山と呼ばれた男性利用者が、車椅子に横たわった状態で乗せられていた。「こんにちは中山さん、お久しぶりですね。体調、戻ったようで何よりです」 大地が声をかけると、中山と呼ばれた男が笑顔で手を上げた。「大地くん。中山さんと山田さん、下川さんはお任せしていいですか。後の方たちは僕が誘導しますので」「分かりました」 そう言って、大地が三人を運動場のテーブルへ誘導していく。「青空〈そら〉さんと海さんは、残りのみなさんの誘導をお願いします」「分かったわ」 青空〈そら〉がスタッフと共に、一人ずつ中に誘導していく。「海ちゃん。そちらの方、大沢さんをお願い出来る?」「え? は、はい!」 青空〈そら〉にそう言われ、海が反射的に答える。そして大沢と呼ばれた女性利用者の後ろに回り、慌てて車椅子を押した。「ひゃっ」 突然車椅子を動かされた大沢が、手すりを握り締めて足を浮かせた。「ご、ごめんなさい……大丈夫でしたか」「うふふふっ、お嬢さん、初めてなのね」「は、はい……す
Last Updated : 2025-04-08 Read more