知輝の母、博多恵理子は知輝の父、博多正雄の最初の妻ではなかった。元妻が自分に追い詰められて亡くなった後、ようやく正雄と結婚できたのだ。同じく浮気相手だった恵理子はもちろん清良の考えが分かっていた。元から自分を遠ざかっていた文香のことが気に食わなかったし、翔明のこともあまり好きじゃなかったから、今、自ら自分に取り入ってくれる人が来て、自分の孫も宿していて、恵理子はもちろん清良が家族になってくれるのが大歓迎だった。だから、清良が流産させられると聞いて、恵理子はすぐに記者団を連れて病院に踏み込んできた。自分の息子の性格も、会社への思いも、恵理子はよく分かっていた。だからこそ、カメラの前でその子を受け入れさせようとした。知輝は怒りのあまりふらふらになっていた。文香が行方不明なのに、自分の母もそんなふうに邪魔してきて、最後、ふらっとした知輝は、完全に気を失ってしまった。結局は退位した正雄が、色々な手を使って、博多財団に悪影響をもたらすニュースを全部消して、恵理子を海外へ送り出した。妊娠した清良だけは、一応別荘に残された。息子自分の責任だから、正雄は干渉する気はなかった。現在、知輝はまだ意識を取り戻していない状態で、別荘に清良と翔明二人しかいなかった。清良は別荘に住むようになってから、もう完全に自分を知輝の未来の妻だと思い込んでいた。今は本性を隠すことも辞めて、毎日自慢ばっかりだった。翔明が優しい清良さんという印象にとらわれていたため、本性を晒した清良を見て、怖くて泣き出した。「うるさい!何をえんえん泣いてんのよ、もしお腹にいる子に何かあったら、許さないからね!」別荘にいる召使いは皆洞ヶ峠を決め込んで、誰もが見て見ぬふりをした。ただ自分の仕事をしていた。かつて文香がいた頃に、翔明はそんな扱いをされたこともなかった。怒鳴りつけられた翔明は更に号泣していた。「悪いヤツ、嫌い!出て行け。ママに会いたい!」なのに、得られた返事はビンタだった。清良は腰に手を当てて、翔明に指を差して、獣のような怖い顔で睨んでいた。「ママに会いたいって?ママはとっくにあんたを捨てたのよ。今すぐに黙って、肩を叩いてくれ。でないと今夜は別荘から追い出してやるから!」
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