柊也に説得された後、澄ももう景のことに心を煩わせるのはやめた。今の彼女には、もっと厄介な問題があった。柊也が酔った勢いで、ついに二人の間の微妙な関係を壊し、酔ったまま彼女にキスをしたのだ。そして彼女も酔っていたせいで、特に抵抗もしなかった。そのまま二人は流れるように一夜を共にしてしまった。事後、澄は「何もなかったことにしよう」と思っていた。大人同士なのだから、割り切ればいいと。だが柊也は子供のように、責任を取れと言ってきた。じっと不満そうな目で見つめてくる柊也を前に、彼女はつい心が揺らぎ、頷いてしまった。キスマークだらけの腕を伸ばして自分の頬を軽く叩きながら、澄は思った。なんであんな勢いで頷いちゃったんだろう……その気配を感じ取ったのか、背後の男は手を伸ばして彼女を腕の中に引き寄せ、低くかすれた声で耳元に囁いた。「いい子にして、もう少し寝よう」それから数日間、澄の足は地面に着くことがなかった。どこに行こうとしても、柊也は必ず彼女をしっかりと抱き上げて運んだ。その数日間の甘い時間の中で、澄は今まで知らなかった柊也の一面を知ることになった。一昨日、冷たい水を飲みすぎたせいで生理痛がひどくなり、倒れ込んでしまったとき。丸一日、柊也は彼女をずっと抱きしめ、お湯を飲ませ、優しくお腹を撫でてくれた。仕事を処理しているときでさえ、大きな手は彼女のお腹の上でそっと動いていた。うとうとと眠り、またぼんやりと目覚めたとき。澄は彼の手を引き寄せ、かすれ声で言った。「もうだいぶ良くなったよ……会社は……?」引地家の国内事業は少しずつニュージーランドに移転し始めていた。本来なら柊也はこの時期、会社で忙しくしているはずだった。それなのに、彼はずっと家で彼女に付き添っていた。柊也は軽く笑い、頭を低くして彼女の額にキスを落とし、柔らかく言った。「大丈夫。俺がいなくて回らないような会社なら、とっくに終わってるよ」「今一番大切なのは、君と過ごすことだ」やがて澄の体調が完全に回復すると、柊也は車を出して、彼女を連れてキャンプへ向かった。今回のキャンプ地はホークスベイのクリフトン高級グランピング施設。山頂に設置されたハンモックに揺られながら、地元産のワインを飲みつつ、遠く海に沈む夕日を眺
Magbasa pa