京北を去った友梨は駅へ向かい、適当に選んだ行き先の切符を買い、離婚後初めての旅に出た。一日の間に北から南へ、気温が徐々に上がり、空気も湿り気を帯びてきた。荷物を持って、見知らぬ街、龍城に到着した。京北の慌ただしさとは違い、小さな街は何もかもがゆっくりとしていた。荷物を宿に預け、目的地を決めない散策を始めた。麺を注文し、賑やかな通りで冷たい飲み物を飲みながら、心も体もリラックスした。携帯が鳴り、新しいSNSアカウントには数人しかいない。開くと山本弁護士からの二通のメッセージ。「義妹さん、身分を明かさずに離婚とは。庄司が怒って大変でした。手紙を預かったので、読んでみてください」庄司が怒るのは予想していた。でも手紙を書くとは、意外だった。文書を開くと長文で、まず文字数に目が留まった。8000字。離婚するだけなのに、8000字も。必要?全部非難の言葉かしら。でも晴れやかな気分を壊したくなかった。そのまま文書を閉じ、携帯をサイレントにし、届いた麺をすすった。食後は夜市を一人で食べ歩き、心の中の複雑な感情は食欲と共に消えていった。夜、ホテルに戻り、山本弁護士にお礼を送り、一つの文書を返信した。庄司は文書を受け取り、期待を持って開いた途端、凍りついた。「長すぎ、読めません。離婚は成立。以後連絡不要」たった二行の言葉が、落ち着きかけた心に大波を立てた。急いで長文を打ち始めたが、「長すぎ」を思い出し、イライラと削除した。ついに我慢が限界に達し、携帯をベッドに投げ、床に崩れ落ちるように座り、疲れた目を閉じた。混乱した頭の中で、あのビデオの場面が次々と蘇った。机のカメラを手に取り、最後の部分を何度も再生し、美咲の場面で止めた。友梨が去って36時間、庄司は離婚の理由を理解した。彼と美咲のことを知っていたのか。その考えが浮かんだ瞬間、心臓が跳ねた。かつてない動揺が押し寄せた。頭を抱え、どこで間違えたのか必死に思い出そうとした。過去の出来事が次々と浮かび、引っ越しの日で止まった。一輝と階段を行き来している間、美咲と友梨は二人きりの時間があった。でも熟慮期間の九日目。何かを知ったとしても、予測はできないはず。全ての始まりは、法律事務所での出会い、不動産契約と騙して署名さ
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