航は「復讐計画」を美咲には話していなかった。ただ朝に姿月をドレス試着に連れて行き、午後に優香を連れて行くよう指示しただけだった。だから美咲は、結婚五周年記念日も優香のための式も全て嘘だと思い込んだ。兄は姿月の誕生日に、皆の前でプロポーズするつもりなのだと。だから朝早くから電話で、姿月のドレス試着を急がせたのだと。優香については、きっと兄は彼女を辱めて追い出すつもりなのだろうと。そう考えた美咲は独断で、会場のドアの上に水の入ったバケツを置き、優香を痛め付けようとした。ドレスの件も美咲の余計な考えが裏目に出た結果だった。優香の着たドレスは、明らかに姿月が朝試着したものより高価に見えた。美咲はドレスショップが取り違えたのだと思い込んだ。メイク中の隙を見て、美咲は店主を問い詰め、なぜ二着のウェディンドレスを間違えてしまったのかと激しく怒鳴りつけた。航が最初に同じデザインを二着注文していたため、店主も混乱した。もしかして急遽同じものを望んだのかと。幸い、優香のドレスは二着作られていた。店主はもう一着を取り出した。美咲は、同じドレスを見せられれば代役の優香はより傷つくだろうと考え、すぐに怒りを収め、できるだけ早く姿月にドレスを届けるように頼んだ。彼女は自分の判断の誤りに気付かず、むしろ得意になっていた。主役の姿月が普通のドレスを着て、偽物の優香が999個のダイヤモンドをあしらったドレスを着るなんて、おかしいではないかと。任務がこれほど見事に逹成できたんだから、兄は褒めてくれるに違いない。もしかしたら、高価で素敵なダイヤのアクセサリーでもらえるかもしれないと。美咲は嬉々として、航の褒め言葉を待っていたのに、待っても待っても、褒められるどころか、最後には航の激しい怒りだった。「美咲、三度は聞かない。優香に何をした?」航は冷たい目で一字一句問いただした。「優香はどこだ?!」「......私......私は......」美咲は真実を言えず、嘘を考えていたが、次の瞬間、航が冷たく脅した。「正直に話せ。監視カメラを見る前に」美咲は観念した。カメラを見れば全てバレる。自分から話せば、少しは状況を良く見せられる。そこで美咲は素直に話し始めた。「お兄ちゃん、誰かが意地悪でドアの上に水を置いたの。義姉さんが入ってきた時
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