一条直也は普段、人に頭を下げるような性格ではなかった。しかし、この時ばかりは涼宮しずかのために、仕方なく低姿勢にならざるを得なかった。幸いにも、しずかが状況を確認し、彼女が本当に失踪している可能性を認めた後、協力してくれることになった。こうして直也は、ようやくしずかのSNSアカウントにアクセスすることができた。そのアカウントのアイコンは彼女自身が描いた自画像で、彼女本人や「安寧」というユーザー名が与える印象と同様、端正で静かな雰囲気を漂わせていた。普段あまり多くを語らないしずかだったが、このアカウントには意外にも彼女の日常が長年にわたって記録されていた。彼女はこのSNSの初期ユーザーであり、最初の投稿は、二人が付き合い始めたばかりの頃のものだった。【私たち、付き合い始めました (* ^ ω ^)】当時流行していた顔文字は、今となっては少し古臭く見える。しかし直也はその投稿を見て思わず微笑んだ。何年が経っても、彼女が恋愛を始めた頃の甘い気持ちが伝わってくるようだった。しずかは一時期、このアカウントで楽しげに日常をシェアしていた。暇な時間に描いたスケッチ、直也から贈られたプレゼント、結婚式のブーケや結婚後に大切に手入れした庭の花々など──その記録はどれも、心温まるものばかりだった。直也は一つ一つを読み進めるうちに心が和らぎ、同時に胸が締め付けられるような感覚に襲われた。しかし、彼が過去を懐かしむように読み進めていたその時、ある時期から彼女は写真を投稿しなくなり、日常の記録も途絶えていた。最後に投稿された彼女の記録は半年前のもので、屋上のブランコに座って撮影した星空の写真だった。「あの頃、何かあっただろうか?」直也は必死に思い返した。そして、胸に鋭い痛みが走る。思い出した。あれは彼が中川優花と関係を持ち始めた頃だった。直也は自分がどれほど徹底して隠していたか自負していたが、しずかはそのわずかな痕跡すら見逃さなかったのだ。これまで経験したことのない深い後悔が、彼を飲み込んだ。彼は勇気を振り絞って、しずかが最後に投稿した文章をクリックした。昨晩の深夜に投稿されたその記録には、たった一言だけが書かれていた。【これで終わりにします】彼女はその投稿で何の説明もしていなかった。しかし、直也にはわか
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