一年後。神崎グループが新たに立ち上げたエンターテインメント会社は、設立から非常に多忙を極めていた。時には食事を取る時間もないほどだった。そんな俺の生活を気にかけた母が、家に来て世話を焼いてくれるようになった。だが、本当の理由は分かっている――母は自分の友人の娘との縁談を進めたいのだ。家に帰ると、母がスープを手にしてダイニングテーブルに置くところだった。その視線を感じ、俺は食事を始める前に声をかけた。「母さん、何か話があるんだろう?」母は微笑みながら、スマートフォンを取り出してアルバムを開き、俺に見せてきた。「この子ね、岸谷さんの娘さんよ。今年留学から帰ってきたの。すごく綺麗な子で、性格もいいのよ。お母さんも直接会ったけど、いい子だったわ」俺は母の手をそっと握り、低い声で言った。「母さん、もうこういうお見合いの話はしないでくれ。俺はもう結婚しない」桜は俺が誰かと再婚することを望んではいないだろう――けれど、それでも俺は彼女を守り続けたい。母はしばらく無言だったが、深くため息をつくと頷いた。俺は運転手に彼女を家まで送るよう指示し、一人残された広い屋敷に戻る。ソファに仰向けになり、リビングのシャンデリアをぼんやりと見上げた。そのシャンデリアは桜が選んだものだった。――彼女が目を輝かせてこれを選んでいた姿を、今でも鮮明に思い出す。俺は安眠薬を2錠飲み込んだ。この一年間、ろくに眠れない日々が続いている。――まだ一度も夢で桜に会えていない。ただ話したい。彼女を抱きしめたい。「ごめん」と伝えたい。俺は桜の部屋に足を踏み入れ、そのベッドに身を投げ出した。夜の訪れ。町全体が夜の闇に包まれる中、俺は微睡みに落ちた。「幸也」顔に触れる柔らかい感触で目を覚ますと、そこには桜がいた。俺は一瞬呆然とした後、彼女を強く抱きしめた。彼女の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、涙を流す。「桜......会いたかった」彼女の肌は温かく、俺は抱きしめた手を離せなかった。「まるで子どもみたい」桜は優しく俺の髪を撫でた。目を閉じたまま、俺は彼女に口づけた。首筋から顎、顔、そして瞳に。「くすぐったい......」桜が身をよじるようにして俺を避けた瞬間、俺は目を開けた。
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