ソファに座って、そのインスタの投稿へのコメントを眺めていた。友達からは冗談めいた反応ばかりだった。そうだろう。私が深津蒼介のことを、自分を失うほど愛していることを知らない人なんていない。私と深津の結婚が間近に迫っているこのタイミングで、私が彼から離れるなんて、誰も信じないだろう。三年間も追いかけてやっと手に入れた、自分では完璧だと思っていた結末。私は彼の彼女になり、二十七歳の誕生日にプロポーズまで受けた。これまでの努力が報われる時が来たと思った矢先、深津は私の頭を殴りつけるような話を持ち出した。他の女性との子作りだった。私は寛容な人間ではない。でも、あまりにも卑屈な愛し方をしてきたせいで、深津は私のことを、婚約者を他の女に譲れるほど心が広いと思い込んでいたらしい。ぼんやりとソファに座っていると、静寂を破る着信音が鳴り響いた。何年も連絡を取っていなかった久我慎也からだった。考えてみれば、私たち幼なじみと言ってもいい関係だった。子供の頃はいつも彼の後ろを付いて回り、「慎也の子分」なんて笑われていた。久我は物静かな性格で、近寄り難い高嶺の花と言われていたけれど、私にはそんな印象はなかった。確かに無口な彼だったけれど、私のどうでもいい話を、うんざりした様子も見せずに聞いてくれていた。大学受験の後、彼は帝都大学へ、私は浜城へ進学した。その後、私は深津蒼介と出会い、どうしようもなく恋に落ちた。彼を追いかけるあまり、何年も北都に帰らなくなってしまった。だから今、久我から電話が来るなんて、予想外だった。私が言葉を発する前に、久我の冷たさの中にある優しさを感じる声が、受話器を通して届いた。「本当なのか?」「何が?」一瞬考え込んでから、久我が何を指しているのか分かった。壁に飾られた写真を見つめた。そこには私と深津が写った一枚の写真が、ポツンと掛かっていた。「本当よ」彼は軽く笑い、その声音には喜びが混じっているようだった。「良ければ、僕を考えてみない?」ベランダの閉まりきっていないドアの隙間から風が吹き込み、まだ掛けていなかった薄手のカーテンが舞い上がり、隅に置いてある極楽鳥花を覆った。「いいわ。条件は?」久我は弁護士だけど、久我家は代々実業家で、彼にもビジネスマンのような考え方が染みついてい
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