彼はリビングの玄関を通り抜け、ソファにもたれかかる私の背中と、その胸に寄り添う舞の姿を目にした。ソファを回り込むようにして数歩近づき、媚びるように問いかける。「まだ怒ってるのか......」次の瞬間、修哉の足がその場で止まり、体が激しく震えた。冷や汗が噴き出す。私が亡くなってから、すでに七日が経過していた。いまの私の遺体は、とても「綺麗」とは言えなかった。青紫色の死斑が全身に広がり、体の下には薄く層をなすように死後硬直の液体がにじみ出ている。その私の傍らで、舞は真っ赤な顔をして力なくもたれかかり、小さな手で私の服の端をぎゅっと掴んでいた。修哉の下唇が震え、声にならない音を発した。彼は乾いた笑みを浮かべて問う。「百合、何をしてるんだ?どうしてこんなところで寝てるんだ?」手にしていた紙袋を放り投げると、修哉は寝室に駆け込み、厚手の布団を抱えて戻ってきた。「こんなところで寝てたら寒いだろう?ほら、もっと温かくしてやるよ。風邪を引いちゃいけないからね」彼は舞をそっと抱き上げ、私の体を布団でしっかりと包み込んだ。それから浴室へ向かい、モップを手に取って戻ってきた。私の体の下に染みた液体を拭き取るためだ。「百合って、本当に不注意だよな。でも大丈夫、これからは俺が全部やるからさ」そう言いながら修哉は、私の体を平らに寝かせようと動かし始めた。「君が寝坊するのも構わない。でもな、絶対に目を覚ましてくれよ。俺たち、まだ長い道のりを一緒に歩くんだ」「舞が学校に通い始めるのも、高校受験を迎えるのも、二人で見届けるって約束しただろう。将来、彼女が結婚するときだって、俺たち二人でちゃんと見守るんだ。舞に、舞に......」修哉が私を寝かせ直そうとしたとき、私の体はすでに硬直していて、動かすたびに骨が軽い音を立てて折れた。その感触が修哉の手のひらに伝わり、彼は思わず手を引っ込めた。そして、その場に崩れ落ちた。全身を丸め、死にかけのエビのように縮こまる。額を床に打ち付けた音が、部屋に鈍く響く。その瞬間、彼はすべてを失った子供のようだった。感情が一気に崩壊し、号泣し始めた。涙が次々と床に落ち、言葉にならない叫びを漏らす。やっとのことで絞り出した声は、もう涙にまみれていた。「俺みたいな最低な男と結婚しな
Read more