私と修哉は、これまでで最も激しい口論をした。彼はテーブルの上のものをすべて床に叩きつけ、怒鳴り声を上げた。「百合、疑えはやめろ!俺と悦奈は何の関係もないんだ!」私は無言で彼の服から見つけた口紅を拾い上げた。手に入りにくい限定品の高級ブランドだったが、残念ながらすでに使われているものだった。胸が痛むのをこらえながらため息をつき、言った。「子供の前なんだから、落ち着いてくれる??」修哉は私の手にあった口紅を叩き落とした。その勢いで、私の手の甲には深い赤い跡が残った。「こんな生活はもうたくさんだ。もう好きにしろ」そう吐き捨てると、ソファにあった上着を手に取り、ドアを乱暴に閉めて出て行った。大きな音が耳に響き、痛みさえ覚えるほどだった。力が抜けてその場にしゃがみ込む私は、修哉の衝動的な行動の後始末をしていた。すると、5歳の娘が寝室から飛び出してきた。彼女はそっと私の首に腕を回し、手の甲にできた赤い跡を撫でながら尋ねた。「ママ、痛いの?」涙で潤んだ彼女の目を見て、私は胸が締め付けられるような気持ちで抱きしめた。「舞、大丈夫だよ。ママは痛くない。ただ......疲れただけ」私は修哉を7年間、変わらず信じてきた。それなのに彼と悦奈の関係は、何度も私の限界を試すようなものだった。これ以上、この結婚生活を続けることは無理だと思った。娘は立ち上がり、小さな両手で私の手をしっかり握った。「舞がママをベッドに連れて行ってあげる。幼稚園の先生が、寝れば疲れが取れるって言ってたよ」舞の素直な言葉に、胸の中の鬱々とした感情が少し和らいだ。彼女に小さな布団をかけてあげた後、私も隣に横になった。いつもの終わりのない物語を読んであげた。夜が更け、舞の穏やかな寝息が聞こえる頃、私はベッド脇のスマートフォンの通知に気づいた。何気なく画面を開くと、それは悦奈からのメッセージだった。添付されていた写真には、修哉が上半身裸でホテルの白いシーツの上に横たわっている姿が映っていた。何のコメントもないが、それだけで主権を宣言しているかのようだった。怒りと失望で血が逆流し、心臓が激しく痛み始めた私は、ふらふらとリビングへ薬を探しに行った。しかし、いつも大切に保管していたはずの薬瓶は影も形もなかった
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