爆発に巻き込まれたあの日、矢部友香を守るために俺は視力を失った。恩義を感じた彼女は俺との結婚を選んだが、知らないところで新しい男を作っていた。さらに心臓病を抱える新しい男のため、彼女は盲目の俺を一人で空港に向かわせ、事故が起きるまで放っておいた。俺が拷問され、バラバラにされたあの夜、友香は新しい男に心臓移植手術を施した。だが彼女は知らなかった。あの男に移植された心臓が、俺のものだということを。……俺が死んだ後、六年間光を失っていた目は魂となって再び光を取り戻した。そして俺は友香のそばを漂い、彼女の口から何度も聞かされた戸村大輔の姿を初めて目にした。彼は友香の患者であり、秘書でもある男だ。その時、彼は顔色も良く病室のベッドに腰掛け、笑みを浮かべながら友香が彼のためにリンゴを剥く姿を見つめていた。心臓病を抱えているとは到底思えないほどの顔色だ。突然、看護師が慌ただしく病室に駆け込んできて息を切らしながら言った。「矢部院長、戸村さんに適合する心臓が見つかりました!今、急いで病院に運ばれています!」その言葉を聞いた瞬間、友香のリンゴを剥いていた手が止まり、危うく指を切りそうになった。ほぼ同時に立ち上がり、興奮で瞳孔が無意識に大きく開いた彼女は急いで看護師に言った。「急いで手術の準備をして、私が執刀する」そして座り直すと、彼女は戸村の手をしっかりと握りしめ、目には隠しきれないほどの歓喜の色が滲んでいた。口元からは「よかった、よかった……」という言葉が何度もこぼれ落ちた。そんな二人の情に溢れた様子を見て、俺はきっと彼らを憎むべきなんだろうと思った。もしあの時、戸村が心臓の不調を訴えなければ、友香が俺を空港まで送るはずだった。暗い雨の夜に白杖を頼りに一人でタクシーを拾い、その車の中で俺は犯人に殺されることもなかった。そもそも俺の目は、爆発に巻き込まれた時、友香を守るために失ったものだ。目を治すため、俺は海外の病院で三年間を過ごした。その頃、戸村は静かに友香の人生に入り込んでいった。結婚して三年後、友香は戸村を自分の一番近くに置く秘書の座に就かせた。そしてよく電話一本で、盲目の俺を家に一人残して出かけていった。俺という夫と交わす言葉は、日に十句にも満たなかった。十句のうち八句は「病院
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