今日は俺の彼女、玲奈の誕生日だ。ここ一年、俺は仕事に追われる日々を送っていて、撮影依頼を毎日こなすうちに、彼女に構う時間がほとんど取れなかった。だけど、次の妊婦写真の撮影を終えれば、結婚に必要な資金がついに揃う。今日はそのことを伝えたくて、彼女にサプライズをしようと考えていた。スタジオの扉を開けようとしたそのときだった。中から聞こえてきた彼女の声に、俺は足を止める。「彼、いつも仕事で忙しいんです。だから、今日は私がサプライズをしようと思って。大切な人と一緒に、最高に幸せな写真を残したいんです」俺はその言葉に胸を高鳴らせた。まさか、彼女も俺を驚かせようとしているのか?その思いに応えるため、喜びを抑えながら部屋に飛び込んだ。けれど、そこにあったのはサプライズではなく――冷たく突きつけられる現実だった。彼女は、見知らぬ男の腕に抱かれながら、恥ずかしそうに微笑んでいた。「彼には、今日は誕生日記念の写真だって伝えてあります。本当は妊婦写真を撮るためなんですけどね。父親として、夫としての気持ちを先に少しだけ味わってもらいたくて」その男は「仕方ないな」と言うように微笑みながら、玲奈の鼻を軽くつついた。「今日は君の誕生日だろう?君が主役なんだから、俺は君と一緒にいられるだけで幸せだよ」二人は見つめ合い、微笑み合う。その光景は、これまで俺が撮影してきた数え切れないカップルたちと同じだった。 俺はドアの前に立ち尽くし、胸が切り裂かれるような痛みを感じていた。 同僚は感慨深げに言った。 「本当に仲がいいよな。安心しろよ、神崎さんは、こういうラブラブな新婚夫婦の写真を撮るのが一番得意だからさ」 そうだな。もしこの女が俺の彼女じゃなかったら、俺だってきっともっと気楽に、心からこの撮影に集中できただろう。 でも、彼女は俺が体を酷使してまで働き、何とかして貯めた二千万円の結婚資金で、迎え入れようとした女性なんだ。 ドアの前で呆然とし、手は握りしめすぎて真っ白になり、体がまったく動けなくなった。 そんな私を見つけた同僚が、彼女には何も知られないままこう声をかけた。「神崎さん、早く来て!お客さんが来てるよ!」同僚はさらに、彼女たちにこう紹介した。「この人が、うちで一番腕のいいカメラマン、神崎陸斗(かんざき
Last Updated : 2024-12-24 Read more