All Chapters of 私が不在の間、60歳の家政婦が息子と寝た: Chapter 1 - Chapter 10

「奥様！奥様、どうかお許しを……！」目の前には、少し年を取った女性が正座して私の前にひざまずいていた。髪は乱れ、両手を合わせてひたすら頭を床に打ち付けていた。「お願いです……うちの家族は、私の給料だけが頼りなんです！奥様はお優しい方でしょう！」私は冷静にその様子を見ていたが、隣の義姉は焦り始めていた。「香織！村上（むらかみ）さんはわざとじゃないわ！うちで働いていた時も、こんなことは一度もなかったのよ。きっと一時の気の迷いよ！」私は焦る義姉の顔を見て、内心冷笑した。その言い分だと、私が村上さんを粗末に扱ったとでも言いたげでしょうね。そもそも、仕事が忙しくて、息子が高校受験の時期だ。だから、義姉の紹介で、この家政婦を雇ったのだ。試用期間は月給60万、正式採用後は100万。年末年始にはボーナスも出し、プレゼントだって欠かさなかった。息子は昼食を学校の食堂で食べるため、普段は朝食と夕食を作るだけでよく、その他の時間は軽く掃除をする程度で十分だった。最初の頃は村上の働きぶりにとても満足していた。料理は美味しいだけでなく、バリエーションも豊富だった。やるべきことも、やるべきでないことも、言うべきことも、言うべきでないことも、全てを弁えていて気が利く人だった。「そろそろ給料を上げようかな」と考えていた矢先、今日、たまたま書類を取りに帰宅したら、家には見知らぬ人たちが集まっていたのだ。彼らはうちのダイニングテーブルに座り、私がわざわざ手配して空輸したアワビやロブスターを、うちの箸でガツガツと食べていた。その顔には、欲望と満足がはっきりと浮かんでいた。私の姿を見た途端、その人たちは箸を止め、全員が呆然とした様子で、既にその場で固まっている村上に視線を向けた。村上は慌てて彼らを追い出すと、私が口を開く前に許しを乞い始めたのだ。私はすぐにでも村上を解雇しようとした。しかし、私が目を離した隙に、彼女はこっそり私の義姉であり、以前の雇い主でもある義姉に電話をかけていた。そして今、目の前のこの状況に至る。「そうです、そうです！奥様！私が悪かったんです！気の迷いです！」村上はそう言い訳しながら、しわだらけの顔をくしゃくしゃにして泣き崩れた。「家が貧しくて……こんなに良いものを見たことがなかったから、家

出発の日、私は何度も念を押した。遅くならないようにして、みんな早く帰れるようにしてね。「分かってるって、母さん！」志信は笑顔でそう言い、私を空港まで見送った。飛行機の中で、私は着陸後の仕事の予定をもう一度確認し、少しの間だけ目を閉じた。そして翌朝、まだ空が薄暗い時間に、飛行機は異国の地へと着陸した。私は荷物受け取り所でスーツケースを待ちながら、スマホの機内モードを解除した。すると、十数件の着信履歴と、数十件ものメッセージが一気に表示された。すべて志信からだった。私は心臓が一気に跳ね上がった。嫌な予感が頭をよぎった。荷物を放って、近くの人気のない場所に移動し、急いで志信に電話をかけた。コール音が一度鳴っただけで、すぐに電話はつながった。しかし、向こうからは何も聞こえなく、ただ一面の静寂が広がっていた。もし息子の急ぎ気味な呼吸音が聞こえなければ、電話の向こう側には誰もいないのではないかと思ったほどだった。しばらくして、彼は震える声で言った。「お母さん……どうしよう……！」不安でたまらず、私はスマホを握りしめる。「志信？どうしたの、何があったの？なんでこんなに電話してきたの！？」まさか、私と一緒に来なかったことを後悔してるんじゃないだろうね？もしそうなら、帰ったらこの調子に乗ったガキをしっかりと叱ってやる！「お母さん……僕……その……」言い淀んだまま、彼はなかなか口を開かない。私は怒りで胸が煮えくり返り、スマホ越しに電話の向こうに飛び込んで、彼の襟をつかんででも話をさせたくてたまらなかった。「何だって言うの！？早く言え！私はこれから会議があるんだから！」このガキ、ほんとに人に迷惑ばっかりかけて！私はスマホを手に取って時間を確認したが、向こうはまだくぐもった声で話していた。イライラが募り、叱りつけようとしたその瞬間、突然電話の向こうから聞き覚えのある声が響いた。「若様！若様、どうしてそんなことをしたんですか！私の顔が……私の顔が立たないじゃないですか！私は……私はもう生きていけません！」村上さんの絶え間ない泣き声に混じって、息子の声がか細く、後悔の色を帯びて言った。「母さん……僕、村上さんと……一緒のベッドで寝ちゃったんだ…！」ドン！私はその場に凍りつき、

私の義姉は、私が夫と結婚して以来、一度も私から恥をかかせたことはなかった。そのせいか、いつの間にか彼女は私が言いなりだと勘違いするようになっていた。彼女に遠慮していたのは、あくまで「家族」の一員としての礼儀に過ぎない。だが今、私の頭の上にまで手を伸ばそうというのか。彼女がますます恐怖に満ちた目で見つめる中、私は数歩で彼女に詰め寄った。――パシンッ！避ける間もなく、彼女の頬に私の手の平が直撃した。この一発には、全力を込めた。彼女の頬は一瞬で腫れ上がり、赤く染まった。「お母さん……」志信が怯えた声を漏らし、言葉に詰まった。「なっ……！」私は彼女の襟を掴み、顔を近づけた。冷静な表情のまま、言い放つ。「桐島瑞華。普段はあなたを立てているけど、それは夫の兄嫁だからよ。勘違いしないで。私があなたを怖がっているとでも？」そう言い終えると、私はもう一度手を上げようとした。彼女は慌てて私の手を振り払い、数歩逃げた。そして顔を押さえながら、顔色が暗くになった。「桐島香織！このクソ未亡人！だから志信もお前の影響を受けて、村上みたいな奴を好きになるんだ。あんたも似たようなもんだろ！卑しい、下品な……うわっ！」私は彼女の髪を掴み、そのまま玄関まで引きずり出した。力いっぱい外へ放り投げた。地面に倒れ込んだ彼女は、憎々しげに私を見上げて叫ぶ。「桐島香織、覚えていなさいよ！あんたなんて、桐島グループの社長の座も長くは続かないわ！」――本音が出たわね。私は鼻で笑った。今まで一度もやったことのない、品位に欠ける行動に出た。彼女の高そうな靴めがけて、一口の唾を吐きかけた。「あんたには唾で十分よ。さようなら、送らないから」ゴミのような連中を片付けた後、私は躊躇いながらも自分を見つめる息子を見た。彼は怯えた小鳥のように、頭を垂れて私を見ようともしなかった。慰めの言葉が喉まで出かかったが、それを飲み込んだ。彼のその様子を見て、私は思わず怒りがこみ上げてきた。こんな小さなことでこんなになってしまうなら、今後会社に入ったらどうするつもりなの？今後、桐島グループはどうなるんだ？！私は無表情で、彼を無視してそのまま歩き去った。「お母さん……！」志信は不安に駆られた様子で声

少し考えた後、私は瑞華をブロックリストから解除した。彼女は前回、私に蹴り出されて以来、頻繁にLINEで悪口や罵倒のメッセージを送ってきた。結局、私は思い切って彼女をブロックリストに追加した。そのおかげで耳が平穏になっていた。私は古いチャット履歴を遡った。瑞華が以前、私に送ってきた戸籍謄本の画像を見つけた。――それを見比べて、私は笑った。これって……瑞華の実家じゃない私は一人で車を走らせ、小山里村へと向かった。数年前まで、この村は曲がりくねった泥道ばかりだった。しかし今では、きれいなコンクリートで舗装されている。すっかり様変わりしていた。瑞華は、桐島勇一郎の二番目の妻だ。一応、義姉と呼んではいるが、実際の年齢は私より若い。桐島家の家族たちは、義兄が田舎の女性と再婚することを快く思っていなかった。そのため、結婚式には私と夫だけが同行したのだ。その後、義兄は瑞華を喜ばせようと、村に大金を投じて道路を整備した。太陽の光を反射して輝く綺麗なコンクリート道路。だが、村の人々がトラクターで通るため、今では所々が崩れていた。逆光の中、私はバックミラー越しに一人の老人が鍬を担ぎ、私の車を不思議そうに見ているのを見つけた。窓を開け、声をかける。「お爺さん、村上早苗の家はどこか知ってますか？」小山里村は小さな村だ。住人たちは皆、親戚同士のように繋がっている。老人は驚いた様子で一瞬固まったが、すぐに恥ずかしそうに笑った。「ああ、早苗か。彼女なら都会の親戚のところへ行ったって言って、何年も戻ってきとらんよ」――親戚？胸の中に嫌な予感がよぎる。何かを言いかけた私をよそに、老人は勝手に話し始めた。「今どうしてるか知らんが、家にも戻らんし、子供だって放ったらかしでな。近所の世話でどうにか暮らしとるんだわ」「子供？子供って、どういうこと？」まさか、早苗には子供がいたのか？私の勘違いに気づいたのか、老人は慌てて手を振った。「違う違う、孫だよ。あの養子に出した娘の子供さ」「養子に出した娘がいるのか？」私は何となく真相が分かりかけて、ハンドルを握る手に力が入った。「まあ、これがまた長い話でな……」老人はポケットを探るが、タバコが見つからない様子だ。私は車を降り、一本のタバコを

噂に聞くと、2人の争いはついに会社にまで持ち込まれた。心身共に疲れ切った勇一郎は、長い間交渉していた大きなプロジェクトを失い、数億円以上の損失を出してしまった。取締役会は彼に対して非常に不満を抱いていた。時間が経つにつれて、勇一郎の問題はますます大きくなった。会社内のプレッシャーに加え、外部の世論も彼に対して否定的になり始めたのだ。桐島家は常に競合他社から狙われている「大きな獲物」だ。さらに私が退任した後、勇一郎のあの三流の実力では、まったく恐れるに足りない。案の定、他人の意図的な助けを借りて、メディアは勇一郎の過去を掘り下げ始めた。知られざる秘密は時限爆弾のように次々と爆発していった。若い頃に弄ばれた女性たち、さまざまなスキャンダル、そして自称の隠し子たちの訴えが次々と明るみに出た。そのせいで、桐島グループは再び大きな窮地に追い込まれた。私はスマホを手に、興味深そうにニュースを読んだ。すると突然、電話がかかってきたが無視した。それでも2回、3回と続いた。最後には以前の秘書から何件ものメッセージが届いた。内容を要約すれば、取締役会の連中がとうとう音を上げ、私に「戻ってきてほしい」と泣きついてきたのだ。私は笑いながら、一言だけ返信を送った。一方で、隣にいる志信はまだ落ち込んだ様子で、静かに縮こまっている。今回の一件は、確かに彼にとって大きな打撃だったようだ。――まあ、若いうちに痛い目を見ておくのも悪くない。次に同じようなことがあったら、ただ叱られて済むと思ってはいけない。自分で立ち上がる力をつけなければならないのだから。私は彼の肩を軽く叩いた。「もう悩むな。明日、一緒に帰るわよ」「家に戻ったら、すべて教えてあげる」会社は結局、私の手に戻った。私はメディア対応から記者会見まで行い、表向きは勇一郎の尻拭いをしているように見せかけつつ、実際にはかつて放置していた罠を少しずつ締めていっているのだ。その後、私は志信にあの日の監視カメラの映像を見せた。彼がそれを見終わった後、顔色がすっかり青ざめた。彼がこの数日どれだけ周囲の非難に晒されてきたことか。仲の良かった友人たちも彼を遠ざけだ。美しい夏休みは悪夢に変わってしまった。今や彼は、完全に反省しているようだ！