番外編:森孝一の視点帰宅すると、妻の森美蘭がまだ夕食の支度すらしていない。馬鹿げている。一日中、人の下で働き詰めだというのに、暖かい飯の一つも食えないとは。怒りが込み上げる。髪を掴んでコンロに叩きつける。床に這いつくばって許しを乞う姿に、底知れぬ満足感が湧き上がる。傷だらけの体で慌てて調理を始める妻。嬉しそうに笑いながら褒め言葉をかけてやるが、あいつは恩知らずにも泣き続けるばかり。何を泣いているのか、分からない。この家の福を泣き散らしているようなものだ。叩くのだって早く飯を作れと言っているだけなのに。食後、ソファでテレビを見ていると、妻が携帯を弄っている。浮気か?誰かとずっとやり取りしているのか?携帯を奪い取ると、なんと他の女と「彼らが死んでしまえばいいのに」などと話している。なんという毒婦だ。いつか本当に殺されるかもしれない。恐怖と怒りが混ざり合う。ならば先手を打つしかない。一突きで息の根を止めた。だが冷静さを取り戻すと、現実が重くのしかかってきた。私が人を殺めてしまった......どうすればいい?寄宿学校に通う娘はどうなる?私が死んだら、娘は一体......それに、まだ息子も授かっていないというのに。森家の血筋は、これで途絶えてしまうのか。携帯を手に取り、深夜、虚ろな目でその知らない相手に「そうね」とだけ返信した。そう、妻は死ぬべきだった。お前も死ぬべきだ。見覚えのあるアイコン。どこで見た?頭の中を巡らせ、突然閃く。社長の携帯で目にしたLINEアカウント......周防真琴、社長の妻だ。なるほど。この腐れ女と同じように、夫を殺したがっているわけか。急いで社長に事態を報告すると、社長は激怒し、妻と決着をつけると言い出した。私は彼を落ち着かせ、一計を案じた。社長が離婚を避けてきたのは妻に財産の半分を取られたくないためだ。若い頃に金持ちの娘を射止めたおめでたい男だ。嫁の実家の金で会社を興せて、その後義父母も年老いて死に、そうでなければ私と同じ雇われの身だったものを。「彼女たちが私たちを殺したがっているなら、逆手に取りましょう。彼女に殺させればいい。成功すれば、彼女は刑務所行きで、離婚で財産の大半を手に入れられる。返り討ちにでも遭えば、なお結構。全財産があなたのものになります」周防成幸は私の提案に理があると
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