もしも命の危機に陥り、家族の助けが間に合わないとしたら、誰に頼る? 誰だとしても、一つだけ覚えておいてほしい。この社会には、善人の顔をして近づいてくる悪魔がいる。 2022年5月6日。 その日、私は目の前で殺人事件を目撃した。 被害者は向かいの部屋に住む一人暮らしの女性。 その夜、残業を終えて家に戻ったのは深夜1時を回った頃だった。向かいの部屋だけが煌々と明かりをつけたままで、不気味なほど目立っていた。 牛乳を飲みながら窓辺に立っていた私の目に、信じられない光景が飛び込んできた。 ベッドの下から、黒いマスクをした男が這い出してきたのだ! その男は、背後から彼女の口を押さえつけると、そのまま抵抗を許さず力で押さえ込んだ。 私は凍りついた。彼女の宙を蹴る足が目に焼き付く。震える手で警察に電話をしたが、15分かかるという回答。だが、それでは遅かった。 男は、彼女をそのまま絞め殺してしまったのだ。 その瞬間、男が窓の外を見上げた。 私は慌てて壁の影に身を潜め、心臓の鼓動が耳を打つのを感じた。 サイレンの音が響き始め、ようやく窓からそっと顔を出してみると、そこにはもう誰の姿もなかった。
最終更新日 : 2024-11-27 続きを読む