私はそのウェイターに案内されて、クラブハウスのロビーの席に座った。ロビーでは、音楽と人々の会話が混ざり合い、とても騒がしい。そして私の気持ちは非常に複雑なものになっていた。 今回得た証拠から、社長が確かに何らかの違法行為に関与していたことが確実だと分かっているのだが、 それをどのように彩香さんに説明すべきか、まったく見当がつかなかった。公演はすぐに幕を開けたが、私は前列の席がすべて空けられているのを見つけた。 どうやら、特定の人物のために用意された空席のようだった。もしそれがクラブの店長、つまり岡本社長のために空けられた場所なら、空いているのは理解できる。舞台上、音楽が流れる中、一列に並んだ女性たちが上に歩いて行った。突然、音楽が止まり、ホールの全ての灯りが消えた。正当私が何か予期せぬことが起こったと思った時、音楽が流れ、光も音楽に合わせて輝き始めた。しかし、ステージ上の数列の女性たちはすでに上着を脱ぎ、裸の上半身で踊り始めていた。もし以前なら、このような光景は私を浮かれさせるだろうが、今はこのような演技を見るとただ心を煩わせるだけで、心の中は社長のことばかり考えている。過程中、そばにいるウエイターは、ステージで踊っている女性を紹介してくれた。表演は約30分間行われ、ずっと私の横に立っていたウェイターの携帯電話が突然鳴った。電話を終えると、ウェイターが私の横を通り過ぎてステージに向かい、ステージの後ろで手を振った。すぐに、ホールの照明と音楽が完全に通常の状態に戻った。その光景を見て、私はなにか重大なことが起きようとしているという直感を感じ取った。その予感は的中したようで、2分もたたないうちに、4人の警備員がクラブの正面入口の扉を開けた。車の前部がホールに進入した。その4人の警備員は、皆真っ黒の服装を身に着けていた。警備員というよりは、むしろボディーガードと呼ぶのがより適切かもしれない、そのような風貌であった。1人のボディーガードがその車の前にやってきて、ドアを開け、片手をドアの上に置いた。車の中から人が出てきた。そして、私をさらに驚かせたのは、歩み出てきたのが、なんと彩香さんだったことだ。彩香さんはサングラスをかけていた。彼女は車から降りて、会場を一周見回した後、私の方を見つめて目が
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