お父さんが病院で目を覚ましたとき、彼のそばには美羽が付き添っていた。彼が目を開けると、美羽はすぐに水を持ってきて、お父さんに差し出した。だけど今のお父さんは、まるで錆びついたロボットのように、誰かに動かされるままのぎこちない反応しかできなかった。何かを思い出したのか、突然、こう言い出した。「詩凜は......詩凜を迎えに行かなくちゃ。そうだ、ここにいたらダメだ、今日は学校まで迎えに行くって約束してるんだ」それは、私が小学校一年生の頃のことだった。通学路で、私を連れて行ってくれるはずの家政婦と別れ、私が見かけたのは美羽を学校へ連れて行っていたお父さんだった。私は泣きながら走り寄って、お父さんの足にしがみついてこう言った。「パパ、私も一度でいいからパパに迎えに来てほしい」おそらく、涙で顔をくしゃくしゃにした私があまりにみじめに見えたからだろう。もしくは、美羽を遅刻させたくなかったのかもしれない。お父さんはそのとき「放課後、迎えに行く」と約束してくれた。父親から初めて受け取った温かくも力強い約束に、私は胸をときめかせて、放課後が来るのを心待ちにしていた。だけど、お父さんは来なかった。父親としての約束を、お父さんはすっかり忘れてしまったのだ。そして十数年経った今になって、ようやくそのことを思い出したなんて。お父さんがふらつく足で立ち上がろうとしたその時、美羽は少し慌てた様子で彼の腕を引き止めた。表情にはどこか焦りが見えた。生きている者が死者に勝つことはできない。美羽は分かっていた。もし私が生きていたら、おそらくお父さんが私を気にかけることはなかったかもしれない。でも、今私はもうこの世にいない。お父さんの罪悪感は増幅して、全てが美羽にとって不利に働くのだと。「月夜おじさま、あまりご自分を責めないでください。詩凜ちゃんのために、十分なことをしてあげましたよ。彼女の死なんて、誰も望んでなかったんです。でも......今となってはもう......それに、詩凜ちゃんがいなくなっても、月夜おじさまには私がいますから。私は小さい頃からずっと、月夜おじさまを本当のお父さまみたいに思ってきたんです。私は、おじさまの娘ですから」美羽の気持ちはいつも隠されていたけど、このときばかりは、その焦りが隠し切れていなかった。美羽が言い終わら
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