冷哉お父さんが私という娘を持ったのは、いわば「事故」みたいなものだった。あの頃、お父さんは月夜グループの跡取り息子として期待されてたけど、家業の継ぐのは嫌だって、突如としてエンタメ業界に飛び込んでいった。もともと目立つ人だから、どこに行っても成功を手にして、俳優としてすぐにスター街道を歩み始めた。一方、私の母さん......晴子は、無名のいわゆる「十八線」の下積み女優。二人が出会ったのはあるパーティーの夜。父は仕組まれた薬入りの酒を飲まされて、ふとしたきっかけで、母とそのまま一夜を共にすることになった。そしてその夜がきっかけで、私が生まれることになったんだ。でもお父さんは、母さんが計画的に自分をはめたと思い込んでいたらしい。業界の裏にあるドロドロした手段が嫌いだったお父さんは、それ以来、母さんのことも激しく嫌うようになってしまった。でも母さんにしてみたら、ただのパーティー参加でしかなかったのに......仕事の都合で仕方なく出席したのに、身の潔白を奪われただけでなく、しかも業界での立場まで奪われて、お父さんの手によって干されることに。結局、母さんは大好きな仕事を断念し、次第に打ちひしがれていった。そして、そのせいで妊娠にも気づくのが遅れてしまって、わかった頃にはお腹が大きくなってた。母さんは、結局私を諦められず産んでくれたけど、生活はますます困難になっていった。そのとき、母さんはお父さんに私の存在を知らせることにしたんだ。でもこの行動がさらにお父さんを苛立たせた。晴子こそが薬を盛って無理やり自分と関係を持ったんだと、お父さんは確信を強めてしまった。だからお父さんは、私を受け入れて最低限の生活は保障してくれたけど、心の底から私を娘と認めたことは一度もなかった。私の誕生が間違いだと思っているし、母さんを愛していなかったから、その延長で私のことも愛することはなかったんだ。でも、私が小さい頃は、お父さんが優しく抱きしめてくれたこともあった。もしかしたら、ほんの少し父親としての気持ちが芽生えたのかもしれない。けど、そのささやかな希望も、星月美羽の出現とともに消えてしまった。美羽は、亡くなったお父さんの親友の娘だった。お父さんはその子を引き取って育て、実の娘のように大切にしてきた。お父さんが私より美羽に愛情を注いでいること
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