修二との電話を切って間もなく、志保が素香を連れて部屋に入ってきた。「私のスマホ、あんたが無音にしてたの?」私は仕方なく尋ねる。「俺だけど、何か?」志保は得意げな顔をしている。「もっと感謝しろよ!修二みたいなクズが何度も電話してくるなんて、素香が止めなかったら、ただの無音にして済ませるなんてことはしなかったさ。直接電話に出て、彼の母親や姉妹に礼儀正しくご挨拶してやったんだから!」「彼があんたの声だって気づいたら、大騒ぎするだろう。さっきの電話だって、彼は既に暴れてるような勢いだった」私は苦笑しながら言った。「何?あのクソ野郎がまたかけてきたのか?!マジかよ、ぶっ飛ばしてやりたいくらいだ!あいつ、何て言ってきたんだ?まさか、またイギリスに行かないとか言うんじゃないだろうな?」志保は怒りで顔を歪めて大声を出した。まるで私が「行かない」と言えば、すぐにでも刀を持って修二のもとに駆けつける勢いだ。「ないよ、そんなバカじゃないから」私は彼を睨んだ。「誰がバカだよ!こんなに大きな屈辱を受けて黙ってたのは誰だ?なんで最初から言わなかったんだよ!お前、その口、何のためにあるんだ?まったく、当時だって……」素香の視線が警告の色を帯びると、志保は口をつぐんで声を小さくした。私は素香に微笑みかけ、気にしていないことを示した。彼女が心配してくれているのは分かっている。私が過去のことを思い出して悲しむのではないかと。でも、それに悲しむ価値があるだろうか?ただの選択の結果に過ぎない。かつてのことは、修二の目にはこう映っていた――彼の母が重病で家が貧困にあえいでいるとき、私は金を投げつけて彼に冷酷な言葉で侮辱した。彼の必死の懇願を無視してイギリスに向かい、家族が決めた婚約者との富裕な生活を選んだと。でも私の視点では、あの年、私の家は一変し、破産するだけでなく、父の逮捕の可能性も迫っていた。あちこちに助けを求めたが、誰も手を差し伸べてはくれなかった。高橋家だけが、清算を終えていない資産を担保に、私にイギリスで志保の表向きの婚約者となる条件を付け、破綻寸前の我が家にわずかな安定をもたらしてくれた。出発前に修二に渡したお金も、あらゆる手配を済ませた後、父が私に残した生活費のほとんどだった。そのせいで、イギリスにい
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