母が殺人現場に到着すると、警戒線の外で止められた。助手がカメラを渡し、状況を説明した。「中に犠牲者がいるらしい。工具を使って逃げようとしていた可能性があるが、具体的な死因は墜落によるものかは、警察の調査を待つ必要がある」母は無表情でうなずいた。母は記者として、長年様々な事件の第一線で奔走してきた。どんな悲惨な被害者を見ても、彼女は動じなかった。それは私が母を尊敬しているところだった。だが、彼女は知らない。今、その中に横たわっているのが私であることを。私は心焦がれて、早く気づいてくれることを願った。しかし、母はスマホを取り出し、柏崎結奈とのチャットを開いた。冷たい表情が一瞬で和らいで、自然と口角が上がった。「ベビー、ママ今日はちょっと忙しいから、少し遅くなるかもしれない」私は空中に浮かんで、胸が締め付けられる思いがした。母が私に笑ってくれたのはいつのことだろう?どんなに忙しくても、結奈には必ず連絡をするのに、五年間私からの無数のメッセージに対しては、ただ「死ね」と返すだけだった。助手が近づいてきて、画面の文字を見て言った。「結奈と莉奈は、ずいぶんと久しぶりだね」母の優しい表情が一瞬で固まり、すぐに暗くなった。「結奈と会うのはいいが、柏崎莉奈なんて殺人犯に会う必要はない!」私は母の憎しみに満ちた顔を見て、思わず目頭が熱くなった。母は相変わらず私を嫌っている。母は三つ子の私たちを産んだ。八歳の時、二番目の姉・柏崎優子が階下に突き落とされ、死亡した。その時、母は泣きながら二番目の姉の遺体を抱きしめ、私に向かって叫んだ。「お前は悪魔だ!牢屋に入れないと!」しかし、私はまだ小さかったため、どんなに優秀な弁護士を雇っても、少年院に入れることはできなかった。母は私を深く憎み、母娘関係を絶って、一番上の姉・結奈と一緒に去った。私を殺人犯として故郷に残し、見捨てた。私は喉が詰まり、涙が出ない。助手が少し戸惑いながら、私のことを弁護しようとした。「でも、あの時はまだ小さかった。もしかしたら、今は変わっているかもしれないよ……」母の顔には嫌悪と皮肉が満ちていた。「あいつは生まれつきの悪種だ。生まれた時に首を絞めておくべきだった」「同じ母親の子供で、結奈はこんなに可
Last Updated : 2024-11-07 Read more