炎の中、旦那が別の女を抱えて慌てて外に走っていくのをただ見ていた。私が命がけで産んだ息子は、その女のそばで彼女を気遣って、落ちないように手で支えていた。最初から最後まで、彼らは一度も私を振り返らなかった。本当に胸が苦しかった。私は彼らの家族なのに、命の危機で、彼らは迷わず私を見捨てた。30分前、佐藤綾乃が家にやってきて、息子を誕生日に連れ出したいと言った。私は冷たい顔で断ったけど、部屋で宿題をしていた中村翔太が声を聞いて飛び出してきて、私を押しのけて彼女の手を取り、嬉しそうに外へ出て行った。胸が痛くてたまらなくて、必死に止めようとした。でも息子は私の腕に思い切り噛みついてきて、その目には憎しみがあった。「なんで綾乃おばさんと行かせてくれないの?」「あんたがいなければ、綾乃おばさんが僕のママだったのに。死んでしまえばいいのに!」本当に私のことが憎いんだろう、腕から血が出るほど噛まれたんだから。そんなとき、廊下で火事が起きた。私たちは閉じ込められて、救助を待つしかなかった。息子は私を一度も見ず、綾乃のそばにいて、大人びた口調で彼女を慰めていた。「綾乃おばさん、大丈夫だよ。パパにとってあなたはとても大切だから、すぐに助けに来るよ」悲しみで心が壊れそうだった。7年も経てば、犬だって情が湧くはずなのに。でも彼にはない。私への感情は憎しみだけ。彼が私を憎む理由は馬鹿げてる。高すぎるおもちゃを買ってあげないとか、宿題を終わらせないとスマホで遊ばせないとか。一番大きいのは、私が自分から身を引いて綾乃を彼のママにしないこと。それでも、彼の頭上の瓦礫が落ちてくるのを見たとき、迷わず飛び出して彼を抱きしめて守った。瓦礫で頭から血を流している私を彼は押しのけて、綾乃の手を取り「怖くなかった?」と心配そうに尋ねた。中村健太が防毒マスクを着けてドアを破って入ってきたときも、息子はすぐに駆け寄って、唯一の防毒マスクを綾乃に渡した。「パパ、先に綾乃おばさんを助けてあげて。彼女は体が弱いから。ママは他の人が助けてくれるよ」涙を流しながら苦笑いして、手に持っていた薬のボトルを彼らに見せて言った。「薬がもうすぐなくなるの。煙の中ではもう長く持たない」7年前の今日、私は難産で大量出血し、手術台で生死の境をさ
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