病院を出た私は、手に医者から渡された検査報告書を持っていた。医者は「あなたはもう長く生きられません」と私に告げた。 これは家系に伝わる遺伝性の病で、治療法がなかった。私は携帯を取り出し、送信されてきたニュースを眺めた。 「ある人気男性スターが深夜に美女と手を繋いでいるところを目撃される」という記事があった。退屈なのでコメント欄を見てみると、支持するファンもいれば、ほとんどは否定的な意見なのが分かった。迎えに来る運転手を待ちながら、私は手に持っていた報告書をしまい、ここでの用事が済んだらすぐに海外で治療を受けようと考えた。私は谷口剣夜にメッセージを送り、今どこにいるのか、家に帰る時間はあるのかと尋ねた。30分ほど待ったが、彼からの返事は一向に来なかった。電話を何度かかけたが、予想通りすべて通話中だった。私は携帯を置き、頭を抱えた。 運転手は「剣夜様はお忙しいので、少し待てばきっとお返事があるでしょう」と私を慰めた。それを聞いた私は思わず鼻で笑った。 「彼、本当に忙しいのね。私という社長よりも忙しいなんて、半日も電話に出ないんだから」私は運転手に「もう彼のことを剣夜様と呼ばないで。谷口剣夜と呼んで、彼にはちゃんと態度を正させなきゃいけないわ」と言った。家に着いてから、ようやく剣夜から電話がかかってきた。私はどこにいるのか聞くと、彼は「祝賀会にいる」と言った。 電話の向こうの音はとても賑やかで、私が話し終わる前に彼は電話を切った。私は一晩中、リビングのソファに座って彼を待ったが、彼が帰ってきた時はもう翌朝だった。彼が帰るなり私を抱きしめようとしたが、私は彼を突き放した。 「シャワーを浴びてきて。お酒と香水の匂いで吐き気がする」と彼に言った彼は自分の体の匂いを確認し、シャワーを浴びに行った。彼が出てきた。バスタオルを巻いていて、濡れた頭も拭いていなかった。彼はタオルを私に投げてきて「拭いてくれない?」と言った。 私は、彼が弱気になっていたのを知っていた。いつも彼はスキャンダルを起こしてから、私を宥めて、その後彼の出演作の宣伝が始まると、うまく釈明していた。以前は彼のこういう小細工を見て面白がって、あまり怒ったことはなかった。だが、今回は拒絶した。彼は私の隣に座り、
最終更新日 : 2024-09-25 続きを読む