土田蓮はベランダで伊吹が車に乗るのを見送ってから、部屋に戻った。三井鈴は電話中で、声のトーンがだいぶ軽くなった。「田中さん、さっきの言い方、何か心当たりないの?」電話の画面に30分の通話時間が表示されていた。田中仁は電話の向こうでクスリと笑った。「彼がやったかどうかなんて、君には分からないだろ」「分からないけど、ちょっと圧かけてみたら、まさか本当に何か出てきたよ」「悪事を働かなければ、恐れることはない。彼の反応、明らかに怪しいよね」田中仁は言った。「気をつけて、もし伊吹がこれから城東との協力をやめたら、間違いなく前に彼らと繋がりがあったってことだ」三井鈴は目を細めて笑った。「私もそう思う」もし何もなければ、伊吹とのネットワークを築いたってことで、このお茶は無駄じゃなかったってこと。「でも、もし本当なら、望愛がなんでそんなことをしたんだろう?」「多分、お金が絡んでるんじゃないかな」三井鈴は考え込んだ。「このプロジェクトにはかなりのお金が投入されてたよね、佐々木取締役の分も合わせると、百数億。もし横領なら、自分の金じゃん」「横領じゃなくて、もし損失だったら?」田中仁が指摘した。「このプロジェクトの施工業者、ギャンブル好きだったでしょ」そうだ!三井鈴はハッとした。「......実は前から気になってたんだ。望愛、デザイナー時代にかなりお金を失ったって言ってたけど、このプロジェクトのお金はどこから出てきたんだろう」三井鈴はその疑問に大胆な予想を立てた。「翔平が出したお金とか?」田中仁はその名前を聞いて、平然と答えた。「どんな関係があれば、何億もお金を出せるんだ?」確かに。三井鈴が沈黙している間、田中仁はその動きに気づいた。「お茶は入れる?」「もちろん。あなたが好きなお茶を、帰ったら入れてあげるよ」「君が入れてくれるお茶なら、何でもいい」三井鈴は自然に口元を緩めて笑った。その笑顔は優しくて甘かった。土田蓮はそれを見て、そっと振り返って窓を開けて換気した。部屋の防音が良いから窓を開けると外の騒音がすぐに入ってきた。土田蓮は茶室からたくさんの人が出てきて、大量の煙が立ち込めているのを見た。「火事だ!消防呼んで!火事だ!」土田蓮はすぐに振り返り、「三井さん、火事だ、急いで外に出よう!」三井鈴も
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