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家族と義妹のプレリュード3

Author: 水鏡月聖
last update Last Updated: 2025-03-04 16:10:19

物心がつく前から我が家に母はいなかった。でも、確かに記憶にはかすかに母親の記憶がわずかに残っており、物心がつく頃には母はてっきり死んだものだと思い込んでいた。思春期に入り、世の中のいろいろなことがわかるようになってから、母は育児放棄のために出て行ったのだということを知った。

 記憶の限りほとんど俺は父と二人で生活してきた。元々フリーランスの父は仕事を在宅で行い、家事のほとんどをしながら俺を育てた。

「あーなんか記念日か何だっけ?」

「いやな、別にそういうんじゃないだが」

「なんだよ、その言い方。なんか気持ち悪いな」

「ああ、いや……会ってもらいたい人がいるというか」

「だれに?」

「母親だよ――」その言葉を聞いた瞬間に、何をいまさらと思った。

「今更会いたくなんてないよ。俺を捨てた親だろ? 俺の家族はあんただけで十分だ」

「ああ、そういう意味じゃなくてだな……

「なんだよ、じゃあどういう意味なんだ?」

続く言葉で、ようやく理解が追い付いた。父は昔から、一言足りない。

――新しい、お母さんだ」

 その意味を考えるのにしばらくの時間がかかった。たぶん、二、三秒なのだろうけれど、随分長い時間がかかったという印象だ。

――そうか、おめでとう」

「いやじゃ、ないのか」

「いやというか……もともと母親の記憶なんてないようなものだし、この年になって新しいおかあさんなんて言われても実感ないな。俺にしてみれば、新しい母というか、父の新しい妻という感じだな。だから、なにも遠慮することはない」

「一緒に住むことになるかもしれないが……

「部屋なら空いてる。二人で住むには広すぎるくらいには」

「そうか……会ってみて、もし嫌なら別にいいんだ。無理強いはしない」

 改めて無駄に広い家を見渡す。郊外とはいえ庭付きの一戸建てに俺達親子は住んでいる。俺が生まれる前に建てたマイホームは、おそらく俺の妹や弟まで想定して建てたものだろう。実際その家に妹や弟が生まれることもなく、母親さえもいなくなった家は空き部屋だらけの無駄な家だった。

「どんな人だ?」

「かわいい人だよ」

「歓迎だ」

「あと、娘もいる。お前の妹だ」

……悪くない」

 よくあるラブコメの妹を想像した。生意気だけどなんだかんだで兄のことが大好きな妹だ。そしてそんな都合のいい話があるわけないという気持ちもまたあった。

 週末の夕方、俺たちは町の小さな居酒屋へと出向いた。堅苦しいレストランや料亭でなくて気が楽だ。新しい母親はそういう堅苦しい店が苦手なのだという。その点だけを取って言えば気が合いそうだ。

 居酒屋の奥の掘りごたつで父と俺は隣同士並んで座った。向かい合わせならまだしも隣に並ぶというのは何か変な気分だ。週末とあって客の入りもなかなかでにぎやかだった。会話をするには少し、大きな声を出す必要があるかもしれない。借りてきた猫でいるわけにはいかないだろう。父の、今後の幸せのためにも。

 しばらくして若い女性がやって来た。

「ごめんなさい。遅くなっちゃって、娘のほうももうすぐ来ると思うから」

 俺たちの向かいに座ったその女性は、見たところ年齢は大学生から二十代半ば。

茶髪で少し化粧の厚い、いわゆるキャバ嬢っぽい印象の女性だった。

 正直なことを言えばその時点で俺の夢の一つは崩れたんだと思った。かわいい妹なんて想像ははかない。彼女の娘であれば、若気の至りでできた子供だとしてもまだまだ幼い少女だろうと。

「初めまして。あなたが蒼君ね」

「は、初めまして」

 やや化粧がケバイとはいえ、整った鼻頭と大きな瞳はそれなりに緊張を誘う。

「芹香さんだ」という父に続き「芹香です」と頭を下げる彼女に対して、またずいぶんと若い女をたぶらかして――などという言葉を用意したが、間を置かず父が言った言葉、「実は、芹香さんは俺の学生時代の同級生なんだ」という言葉。一瞬冗談なのかと思った。

 たしか父が今年で四十……いや、ありえないだろ。

「ふう……それにしても喉が渇いたわ。とりあえず、何か頼みましょ」

 メニューを開き、芹香さんはビールを、俺と父はウーロン茶を注文し、それと何となくつまみになりそうなものを数点。

飲み物が到着し、「とりあえず乾杯しましょうか」という芹香さんの言葉と同時に、遅れた彼女の娘が到着した。

芹香さんが父と同じ年であるならば、その娘もまた、俺と年が同じくらいだということは自然に考えられることだった。

茶色いキャミソールとベージュのショートパンツからむき出しになった白い四肢が長く伸び、それらは不安になるほどに細くて長い。柔らかい黒髪の揺れる表情は整いすぎている。

「遅れました。中西茉莉と言います。これからよろしくね、おにいちゃん」

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    どいつもこいつも脳みそがちんこでできているらしい。高校二年の夏休みが明けた九月初日の教室ではいきがった男子生徒の武勇伝が飛び交う。やれ、彼女が出来ただの、やれ、初めてセックスをしただのそんなくだらない話ばかりだ。「よう、折田。お前夏休みはどうだったんだよ」「別に、なにもないよ。ほとんどバイトばかりしていたからな」 クラスメイトの山岸が声を掛けてきた。別に仲がいいわけでもない。ただ単に自分の自慢話がしたくて、十分にマウントが取れそうな相手である俺を選んだだけだ。「――でさ、それで由奈にフェラしてもらってさ」 聞いてもいない話をしてくる。隣のクラスの西崎由奈は清楚な雰囲気でちょっとだけ好意を抱いてはいたのだが、夏休み前に山岸と付き合うようになったと聞いて嫌いになった。煩悩にまみれて自制できないような奴に魅力は感じない。 山岸に自慢話に興味がないことを悟ってもらいたくてあえて視線をそらす。たまたまそこにいたたいして美人でもないけど結構モテる河野がいた。少しばかり肉付きが良い日焼けあとの残る腕を遠くの誰かに向けて手を振っている。その袖口から覗く腋と水色のブラに一瞬だけ反応して慌てて視線を逸らす。 山岸は気づいたらしい。耳元に顔を近づけて「いいよなあ。河野、後ろからガンガンつきてえよ」とつぶやく。 その言葉のせいで少し河野のことが嫌いになった。ちんこでものごとを考えるのは嫌だ。 チャイムが鳴り、教室に担任が入って来る。この瞬間に夏休みは完全に終わる。「お前ら、夏休みは真面目に過ごしたか?」 担任の須藤は二十代の後半で社会教師。夏休みは趣味で化石の発掘をしているらしく真っ黒に日焼けした姿で教壇に立つ。若い男性教師というだけで意味なく女子からモテるのだが俺はこの担任が嫌いではない。いくら女子生徒からモテようとも一切それになびくことなく自分の趣味に打ち込んでいるからだ。「それじゃあ、まあ、ホームルームを始める前に大事な話がある」 教室中がざわざわと騒ぎ立てる。予想がつかないわけでもない。夏休み明け、教室の一番後ろの俺の席の隣には、夏休み前まではなかったはずの机と椅子がある。「はいはいはい。静かに。いいか、男子ども。あまり大きな声を出すんじゃないぞ。女子もな。嫉妬していじめたりするんじゃないぞ。よーし、中西。入ってきていいぞ」 教室前面のドアが開く。

  • 義妹とその母によるNTRのエチュード   序文

    ――お願い、蒼君。茉莉を、直人さんから寝とってほしいの。 芹香さんはそう言った。 ――寝取る。ネトリ。NTR。「それは倫理に反する行為ではないとあたしは思うわ」 と芹香さんは言う。「これは非難することはできない。純粋な愛、純愛だと思うわ。だけどそれを、好ましいと思っていない人間もいるわ。あたしと、蒼君。そしてその二人が手を取り合ってその愛を勝ち取ることも誰からも非難されるようなことじゃない。それもまた純愛よ。 要するに茉莉がこの世で誰よりも好きな人が蒼君になればいい事なの。すべては倫理に反しない、純粋な愛の結末」 ――純粋な愛。純愛。 そうだ。それこそが純愛なのだ。愛する人がいて、その人を振り向かせるための努力をする過程。それもまた純愛。「俺に、できますかね」 そんな言葉の裏には、当然君ならできるというような励ましの言葉を期待していたし、当然もらえると思っていた。だけど……「たぶん、今の蒼君には無理ね」 芹香さんは厳しい言葉を言い放つ。「あ、ええっと」「じゃああえて聞くわね。蒼君は直人君に何だったら勝てるの? 包容力だって経済力だって足元にも及ばないわ。強いて言えば若さかしらね。でも若さっていうのは強みかな? 経験の低さを物語っているだけじゃないの? それに茉莉はそれなりに経験を積んでいるわ。蒼君はどうかしら? 茉莉を寝取ろうとしたところで、蒼君のテクニックで満足できるかしら? ふふふ、厳しいことを言ってごめんなさいんね。でも、寝取るということはそういうことなのよ。蒼君、そういう経験はあるの?」 立て続けに浴びせられる辛辣な言葉に心はすでに折れそうになっていた。俺に勝てる要素なんてない。それに俺は童貞だ。壁に耳をあてて遠くの茉莉の声に一人自慰をすることが関の山の情けない人間だ。「俺には……」 自信を無くしかけてうつむく俺を芹香さんは優しく抱きしめてくれた。「だいじょうぶよ。だいじょうぶ。誰だって初めから上手にできるわけじゃないわ。安心して、あたしがちゃんと教えてあげるから」 言っている意味が解らなかった。いや、それは嘘だ。言っている意味が解らないことにした。わからないから、不可抗力としてそうなってしまったのだと自分自身に言い訳をするためだ。俺の頭の中を占めているちんこがそうささやいたのだ。 だから俺は、自分のパンツの中に滑

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