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第2話

再び管制塔と連絡が取れた。

田中真夫が苛立たしげに声を上げた。「C2991には特殊な状況があり、先行して降りる必要がある。お前たちは旋回して待機しろ」

私は声を張り上げて反論した。「私たちの位置には雷雲が発生してるかも......」

すると、田中真夫が冷ややかな笑いを漏らした。

「やれやれ、鈴木伊美子、自分が安全に降りたいからって、どんな嘘でもつくつもりか?

どうだ、今度は娘が死にかけてるなんて話は持ち出さないのか?」

私は深呼吸をして、感情を必死に抑え込んだ。「田中真夫、今のあなたのやってることは規則違反だ。

この飛行機には三百人以上の命がかかってるんだ!

「お前だって、他の飛行機に乗ってる三百人以上の命を軽んじてるじゃないか!」田中真夫は怒りを露わにした。「最初から最後まで、自分のことしか考えてない、なんて自分勝手なんだ!」

その向こうから、江口温子の柔らかな声が聞こえてきた。「わあ、真夫兄さん、ここが管制塔なんだね。初めて来た......」

思いも寄らない衝撃が心を突き刺し、まるで心臓が針で刺されたかのように痛んだ。

娘は父親の仕事場に一度行ってみたいと何度も願っていた。

彼女の六歳の誕生日で、私は彼女の代わりにその望みをお願いしたんだ。

だが田中真夫は一瞬の躊躇もなく、眉をひそめて拒絶した。「あの子ももう大きいのに、どうしてまだそんなわがままを言うんだ?そこは誰でも入れるような場所じゃない」

だが今、娘が死んだばかりに、田中真夫は江口温子を管制塔に連れてきたんだ。

私は冷静に声を出した。「田中真夫、もし飛行機が事故を起こしたら、あなたも処分を受けることになるんだぞ!

あなたが前に処分されたとき、私はどれだけの努力をしてあなたを空港に残したと思ってるんだ......」

「よく言うね!」

田中真夫は冷笑し、私の言葉を遮った。

彼はマイクに向かって鋭く言い放った。「鈴木伊美子、お前は本当に下劣だな!俺が何も知らないとでも思ってるのか?あの時、温子が処分を免れさせてくれたからこそ、俺は仕事を失わずに済んだんだぞ!

お前なら、あの時俺に何の関心も持ってないくせに、今になって温子の功績を横取りしようとするなんて、気持ち悪いんだよ!」

とてつもない理不尽さがこみ上げ、私は信じられなくて問い返した。「彼女だと?ありえない、あの時は私が——」

だが通信は再び遮断された。

私の説明は一切彼に届かなかった。

でもわかっていた。

江口温子がいる限り、どれだけ説明しても、彼には一言も届かないのだろう。

田中真夫と結婚してから、彼に心の奥に別の女性がいるとは知らなかった。

私はすべての情熱と愛情を余すことなく夫に注ぎ、何も隠すことなく彼に尽くしてきた。

私たちは相思相愛で、いつまでも一緒にいられると思っていた。

周囲から見ても、私たちは幸福で調和の取れた家族だった。

だが、娘が五歳のとき、江口温子が帰国した。

その頃から、田中真夫はどこか落ち着かず、帰宅が遅くなることが増えた。

彼を信じていた私は、何も問い詰めたりはしなかった。

しかし、ある日、田中真夫は重大なミスを犯した。

航空管制中に一瞬気が散り、二機の飛行機が衝突しかけた。

このミスはあまりに深刻で、空港は彼を直ちに停職して、彼は解雇の瀬戸際に立った。

彼の仕事を守るため、私は各所に頭を下げ、幾度も泥酔し、ついには胃潰瘍で入院し、命の危険さえあった。

あの入院で、私は一週間の休暇を取らなければならなかった。

田中真夫には観光旅行だと嘘をついてごまかした。

そうして、彼の仕事はようやく守られ、処分だけで済んだんだ。

だが、まさか今になって、その功績が江口温子のものになっているとは思いもしなかった。

なるほど、あの事件以来、田中真夫が私に冷たくなったのも理解できた。

逆に江口温子は彼にとって何よりも優先される存在になった。

江口温子の指がちょっと傷ついただけで、発熱中の娘を放って駆けつけた。

江口温子がつらい思いをしたときは、普段は料理をしない彼が手料理を作って彼女を励ました。

前世では、江口温子が事故に遭った後、彼はしばらく沈黙したままだった。

私は彼が気づき、私たちこそが家族であると悟ったんだと思い込んでいた。

だが、私と娘を家に閉じ込めたとき、私はようやく悟った。

彼は悟ったわけではなく、むしろ機会を待っていたんだ。

自分の最愛の人のために、復讐を果たす機会を——。

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