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第 670 話

Author: 水原信
さまざまな薬剤、そして数々の実験……

棚には様々な薬剤と実験器具が並び、テーブルの上には色とりどりの液体が入った試験管が置かれ、蒸留水が泡を立てている音が響いていた。

これは朔都が行っている実験の一部に過ぎなかった。そこには毒薬も解毒剤も含まれており、すべて番号で管理されていたが、名前はついていなかった。

実験室には少なくとも十数人の研究者がいて、完全防備の状態で黙々と作業を続けていた。

その時、州平はソファに横たわり、意識を失ったままだった......

一方、海咲は病院に運ばれ、全身の検査を受けた。

幸いにも擦り傷程度の軽傷で、体には特に異常はなかった。

紅が身を挺して守ってくれたおかげで、
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