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ー再び戦場に④ー

last update Last Updated: 2025-04-06 11:34:44

ドラゴンに出会った時はどうなるかと思ったが、無事に帰ってくることができて、あっという間にここに来てから4年が経とうとしている。いつの間にか自分も古株だ。

「隊長!ここにいたんですね。」

木の上で手紙を読んでいると、ルエルが声をかけてきた。昔から隠れ鬼をして負け無しだったから、見つかった時はびっくりしたものだ。ルエル曰く、4年も一緒にいれば何処にいるのか分かるらしい。

「あぁ。兄から手紙から届いたから読んでいた。」

定期的に兄や弟からは連絡が来るものの夫でもあるはずのアドルフからは一切連絡が来ることは無かった。

兄からの手紙にはアドルフの事が細かく書かれていた。なんだかんだ頼んだことはしっかり行ってくれるいい兄だ。

「ルエルはここの任期を終えたらどうするんだ?傭兵にでもなるのか?」

「いや、僕はやらないといけないことがあるので元の仕事に戻りますよ。」

徴集される時は国からの支持のため仕事は休暇扱いになる。だから元の仕事に復帰することは簡単だ。

「私も帰ったら仕事探さなきゃならないな。」出来れば傭兵とか出来たらいいんだが、女ということもあり難しいかもしれない。それに父さんにバレたら拳骨が落ちそうだ……。

「僕いい仕事知ってるんですけど、紹介しましょうか?」

そもそもルエルがなんの仕事をしてるのかも知らないが…洋食屋での仕事は人手が足りているだろうし、何故か昔から台所に立つなと言われてきたから難しいだろう。

全て給金が手元に帰ってきたら田舎で、1人ゆっくり暮らすのもありかもしれない…

「まぁ、仕事が見つからなかったらその時は頼むよ。」

「了解です!いつでも仕事紹介するんで言ってくださいね!それにしてもあとすこしで任期満了だとおうと…なんだか寂しいですね。」

「そうだな…と言ってもまだあと1年はあるんだ。他の隊では最近魔物討伐で死者が出ていると聞く。最後まで気持ちを切らさないようにしよう。」

この隊ではまだ幸い大きな怪我をする人が出ていないが、他の隊では結構な死者が出ているそうだ。

ルエルと話しながら隊の元に戻ると、団長が声を掛けてきた。

「エル。ちょっとこっちに来い。」

無愛想な物言いは変わらないが、いつも気にかけてくれているということはわかる。

「団長、なんですね?」

「急遽で申し訳ないんだが、お前に大隊長を務めてもらいたい。そしてこのSランクのドラゴンを討伐してきて
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