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第 87 話

Auteur: 一笠
「はい!」

凛はきっぱりと承諾した。心の中は宝くじに当たったかのように踊っていた。

その後、美雨と凛は楽しそうに話しながら前を歩き、聖天は黙って後ろについていった。

凛の専門的な意見は、美雨の称賛をすぐに得た。凛の中で、もっと早く出会いたかったという思いがますます強くなるばかりだった。

他人は写真から撮影技法しか見抜けないが、凛だけが深い感情や、彼女が本当に表現したかった理念を見抜くことができた。

一通り見終わると、美雨は凛と過ごす時間を名残惜しみながら、期待に満ちた様子で尋ねた。「あなたももしかして、自分の作品集を持っていたりするのかしら?」

凛は頷いた。「はい、昔、私も写真を撮るのがとても
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