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第300話

啓司は別荘内に他人がいることを許さなかったため、牧野は彼の指示通り、外で待機するよう部下に指示を出し、何か異変があればすぐに対応できるようにしていた。

綾子は啓司を看病する時間がなかった。現在、黒木グループ内では熾烈な競争が繰り広げられていたからだ。

啓司の従兄弟である昂司は、古参株主たちと手を組み、株主総会を開催し、啓司を会長の座から引きずり降ろす計画を立てていた。

黒木おお爺さんも高齢で、体力的に限界が来ていた。

また、黒木おお爺さん自身も、盲目のまま啓司が黒木グループを引き継ぐことに反対していたため、綾子は四面楚歌に立たされていた。

翌朝。

午前9時、またしても衝撃的なニュースが飛び込んできた。「黒木啓司、両目失明で妻との離婚申請が却下される」。

記事の中では、かつてのビジネス界の巨人が、いかに妻に見捨てられ、哀れな状態に陥っているかが詳細に書かれていた。

誰かが動画を投稿し、「目が見えなくなったが、馬鹿ではない」というタイトルを付けていた。

それはまさに紗枝が言った言葉だった。

それに対するコメント欄は大荒れになった。

「なんてことだ、黒木啓司がこんなに哀れになるなんて!かつてのエリートが、今では盲目の男に成り果てたなんて」

「本当にそうよ、彼の妻がこんなことを言うなんてひどい話だ」

「それにしても、柳沢葵はどこに行ったの?初恋の相手として、今こそ彼女が黒木啓司を救うべきじゃない?」

「柳沢葵、最近見かけないけど、どうしたんだろう?」「聞いた話じゃ、業界から干されてるらしいよ…」

「まさか、まだ柳沢葵が黒木啓司にふさわしいと思っている人がいるの?あの動画のことを忘れたの?」

ネット上では、この話題で盛り上がり、様々なコメントが飛び交った。

そして、全体の動画が公開されると、また新たなコメントが寄せられた。

「なんだか夏目紗枝が可哀そうに思えてきたんだけど。彼女の言葉、聞いてないの?彼女は黒木啓司が失明する前にすでに離婚を申し出ていたんだよ」

「そうだよ、少し前に二人の離婚裁判が話題になってたじゃないか」

唯もそのコメントを目にし、紗枝のために声を上げたくなり、怒りを込めた記事を投稿した。

「夏目紗枝のことを悪く言う人たち、あんたたちこそ盲目なんじゃないの?夏目家が倒れた時、黒木啓司は一度も紗枝を助けようとしなかったん
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