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第1152話 失礼極まりない

Penulis: 花崎紬
「面白いもの?」

美月は少し考えてから尋ねた。

「何がしたいの?」

「何でもいいよ。つまんないから……」

美月は視線を二階に向けた。

「じゃあ、二階に上がって部屋を選びましょうか」

ゆみは嬉しそうに美月について二階に上がり、佑樹と念江はそのまま一階に残った。

しばらくすると、一人のボディガードがスーツケースを持って入ってきた。

彼はソファのそばにスーツケースを置いた。

「お二人様、こちらはお届けものです」

佑樹はすぐにソファから飛び降り、スーツケースを開けて中からパソコンを取り出した。

そして念江と一緒にテーブルに座り、先生から出された宿題に取り掛かった。

彼らが勉強に励んでいる最中、晋太郎が帰宅した。

ドアを開けると、二人の子供がパソコンの前でキーボードを叩いているのが見えた。

晋太郎はゆっくりと彼らの前に歩み寄ったが、二人はまったく気づかなかった。

彼らのパソコン上で高速に動くコードを見て、晋太郎は軽く眉をひそめながら尋ねた。

「君たち、こんなこともできるのか?」

突然の声に、二人の子供はびっくりして飛び上がった。

彼らは一斉に、突然現れた晋太郎を見つめた。

佑樹は言った。

「足音がしなかったけど?」

晋太郎はソファに座って尋ねた。

「どうやってこんなことを覚えたんだ?どのくらいできるんだ?」

「念江はファイアウォールの突破が得意で、僕はトラッキングと位置特定が得意だ」

晋太郎は眉を上げた。

この二人の子供がこんなに優秀だとは思っていなかった。

「そうか。ある人を探してほしいんだ」

晋太郎は佑樹に言った。

佑樹はふんと鼻を鳴らした。

「簡単だよ。誰を探したいの?でも、無料じゃないよ」

晋太郎は佑樹に番号を伝えた。

「この人がどこにいるか調べてくれ」

佑樹は手を差し出した。

「手付金200万円、見つかったらさらに800万円、見つからなかったら200万円は返すよ」

晋太郎は佑樹がこんな大金を要求してくるとは思っていなかった。

「子供がそんな大金を持つのはよくない」

彼は婉曲に断った。

「払わないなら手伝わないよ。それが僕のルールだから」

晋太郎は念江を見た。

しかし、念江はそっと顔を背け、見ていないふりをした。

佑樹の口座にはすでに数億円が入っている。

それはすべて人探しで稼いだお金だ
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    「そうですね、紀美子さん」舞桜は言った。「この件、急いでも仕方がありませんわ」「お兄ちゃんには、食事を済ませたらすぐに帰ってもらおう。何だか悪い予感がする」紀美子は少し考えてから言った。「心配しないで、紀美子さん」舞桜は慰めた。「私は翔太さんを説得して、父が手配したボディガードを彼につけたの。軍人を目の前にして手を出すヤツはいないでしょ?」「舞桜、助けてくれてありがとう」紀美子は感謝の気持ちを込めて言った。舞桜はにっこり笑った。「紀美子さん、私、将来あなたのお義姉になりたい!」紀美子は軽く笑った。「いいよ。あんたがお兄ちゃんを捕まえられれば、私は賛成するわ」パーティーが始まり、社員たちは好奇心から次々と紀美子に酒を勧めに来た。何度も繰り返しているうちに、紀美子の手元の赤ワインボトルも空になってしまった。しかし、絶えず酒を勧めに来るので、紀美子がまた酒を注ごうとすると、翔太に手を押えられた。「紀美子、もうこれ以上飲むな」この時の紀美子はまだ意識はしっかりしていたが、頭が少しぼんやりしていた。「大丈夫、もう少しだけ彼らと飲むわ」その言葉が終わらないうちに、龍介が口を開いた。「翔太さん、心配しないで。ここには私がいます。こんなパーティーはめったにないんだから、彼女にも楽しんでもらいましょう。ほら、あなたたちも久しぶりにこうやって集まれたのですから」翔太は紀美子を心配そうに見て、そして仕方なく席に戻った。座ると、彼は晋太郎に視線を向けた。龍介は晋太郎が記憶を失ったことも知っており、彼が今紀美子に対してどう思っているかも理解していた。この間、紀美子は彼に対して十分に積極的だった。しかし、たとえ彼女が今諦めると言っても、彼は何とも思わないだろう。視線を感じた晋太郎は翔太の方を見た。ただ、彼が翔太の方を見た時、翔太はすでに目線を別の方に向けていた。晋太郎は翔太の身分をよく知らないので、美月に尋ねた。「彼は誰だ?」「渡辺さんですか?帝都の三大家族の一つ、渡辺グループの渡辺翔太さんです」「彼と紀美子はどんな関係なんだ?」晋太郎は眉をひそめながらそう聞いてきた。その様子を見て、美月は危うく笑い出すところだった。口では気にしないと言いながら、無意識の

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    入江紀美子が美月に応じて雰囲気を和らげようとしたところ、宴会ホールの扉が再び開かれた。松風舞桜がドアの後ろから頭を出し、キョロキョロと周りを見回した。紀美子たちを捉えると、彼女は驚いて目を見開いた。舞桜は悟がいないことを確認してから、漸く視線を戻し、扉を完全に押し開けた。すると、渡辺翔太の姿が皆の前に現れた。その姿を見た人々は皆驚き呆然とした。注目される中、翔太と舞桜は紀美子の前に来た。「紀美子、お誕生日おめでとう」翔太は紀美子に向かって両手を広げた。紀美子は涙を堪えながら、そのまま翔太の胸に飛び込んだ。「来てくれるなんて思わなかったわ」「今日は君の誕生日なんだから、泣いちゃだめだよ」翔太は優しく紀美子の長い髪を撫でた。「でも危険だわ……」紀美子は涙声で言った。翔太は隣で顔を曇らせている晋太郎を見上げた。「彼が来れて、俺が来れないわけがないだろ?」紀美子は数秒間黙ってからうなずいた。晋太郎は眉をひそめた。なにが「彼が来れて、俺が来れないわけがない」だ?この遊び女、周りに男が次から次へと現れる!きっと昔から浮気をしまくっていたに違いない!だから自分はずっと、彼女と結婚しなかったんだろう!「もし悟が来たらどうする?私でさえ彼が現れるかどうかわからないのに」紀美子は翔太の懐から離れてから言った。「今日、市長が連行された」翔太は軽く笑みを浮かべ、紀美子の耳元で囁いた。「もう?」紀美子は一瞬驚いた。翔太は紀美子の手を握り、それ以上の説明しようとしなかった。「突然現れて皆さんを騒がせ、申し訳ありませんでした。皆さん、どうぞお席にお着きください」彼は皆を見渡してから言った。客でありながら主人のように振る舞うなんて。二人の関係が親しいのは明らかだった。晋太郎は意味深に紀美子に目をやってから、テーブルのそばに座った。「渡辺さん、噂はかねがね伺っておりました。今日はお会いできて光栄です」龍介は翔太に向かって言った。「龍介さん、紀美子のことを気にかけてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。乾杯させてください」挨拶を交わした後、彼らは一緒にテーブルに着席した。紀美子と佳世子は晋太郎の真正面に座った。「ね、見た?晋太郎の顔が真っ青にな

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1161話 気に入っている

    佳世子と龍介も彼女の後について歩いていった。美月と晋太郎のそばまでくると、紀美子は美月に言った。「誕生日パーティーに来てくれてありがとう」紀美子が近づいてきた時から、晋太郎は彼女の視線が一瞬でも自分に向けられていないことに気づいた。まるで、彼が空気のような見えないものだった。一抹の不快感が彼の心をよぎった。「紀美子さん、招待してくれてありがとうございます」美月が紀美子に礼を言ってから、彼女のそばにいる二人に挨拶をした。「どうも、佳世子さん、龍介さん」佳世子は美月を知らなかったので、うなずいて挨拶した。「美月さん、お久しぶりです」龍介は美月に手を差し伸べた。美月は口元を手で覆って軽く微笑み、そして晋太郎をちらりと見て言った。「龍介さんはご多忙でなかなか時間が取れない方だと聞いていますが、今日はわざわざ時間を割いて紀美子さんの誕生日パーティーに参加されるなんて、相当彼女のことが気に入ったのでしょう」龍介は美月がなぜそんな風に言ってくるのかよくわかっていた。彼も、晋太郎を横目で見て演技をした。「そうですね。私は紀美子さんのことがとても気になっています。たとえどんなに忙しくても彼女の誕生日には一緒にいたいと思って」その言葉を聞いて、紀美子は急に龍介を見上げた。龍介は彼女に優しい笑みを返した。「ちょっと、龍介さんったら……」紀美子は軽く眉をひそめた。「紀美子!」突然、佳世子が紀美子を遮った。「あんたたち、イチャつくのは構わないけど、こちらにいる森川社長のことも忘れないで」佳世子がそう言うのを聞いて、美月は感心した。佳世子さんと気が合いそうだ。とても気が利く!一方で晋太郎は、紀美子と龍介が目を合わせるのを見て苛立っていた。さらに、龍介が言った「気に入っている」という言葉を聞き、彼は無意識に眉をひそめた。「龍介さんはお目が高いですね」龍介は彼の視線を捉えた。「森川社長がおっしゃる通り、紀美子さんは私が今まで出会った中で最高の女性です。このような女性を他の人に譲るのは、本当に悔しいです」「最高の女性?」晋太郎は冷たく笑った。「どうやらあなたは、私の言葉の意味を理解されていないようですね。龍介さんのような方が、子供を産んだ女性を宝物のように思うなんて

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1160話 付き合っちゃえ

    龍介は頭を上げ、グラスの中のシャンパンを一気に飲み干した。彼の行動を見て、社員たちは驚きで目を見開いた。反応の早い社員は思わず冗談を言った。「社長、吉田社長とあなたの関係を説明してくれませんか?」「社長、隠してたんですね!」「社長、ちょっと教えてくださいよ。何か良いご報告があるんじゃないですか?」「……」紀美子は彼らの言葉に耳が赤くなった。否定しようとしたその時、龍介は笑いながら言った。「俺がまだ彼女を口説いている途中なんだよ」「わあ!!社長、幸せ者ですね!」「さすが社長、すごい!」「付き合っちゃえ!付き合っちゃえ!」「……」紀美子はお祝いの声に包まれながら、驚いて龍介を見つめた。口を開こうとしたその瞬間、宴会場のドアが開いた。美月が、完璧なボディラインを際立たせる黒いチャイナドレスを身にまとい、シンプルな簪を一本挿した長い髪で皆の前に現れた。赤い唇が、彼女のオーラを最大限に引き出していた。そんな絶世の美人を見て、男性社員たちは思わず息をのんだ。もし美月が妖艶な女王だとしたら、紀美子は清純さの頂点に立つ存在だ。二人の白と黒のドレスは対照的だがどちらもとても美しく、皆視線をどこに向ければいいかわからなくなった。美月は紀美子を見つけると、優しく手を振って挨拶した。紀美子がうなずこうとしたその瞬間、視界に懐かしい人が飛び込んできた。美月の後ろから入ってきたのは、黒いスーツを着た晋太郎だった。彼の身にまとう重厚な雰囲気は冷たさを漂わせ、端正な顔は威厳に満ちていた。彼のオーラはあまりにも強く、美月を食い入るように見ていた男性社員たちも思わず視線をそらした。彼が入ってきた瞬間、紀美子の後ろから社員の驚きの声が上がった。「あれは……森川社長!?」社員の声は大きくはなかったが、周りの人たちにはっきりと聞こえた。「森川社長は行方不明じゃなかったの?」「まさか!本当に森川社長だ!」「森川社長と社長は今どんな関係なんだろう?マジで……」「もうやめろ、これは私たちが議論していいことじゃない」紀美子の視線は晋太郎に釘付けになり、社員たちの話は彼女の耳に入ってこなかった。一方、龍介は思わず紀美子を見つめた。彼女の目に浮かぶ苦しみを見て、彼は目を伏せて考え込

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1159話 口に出さずにはいられない

    紀美子はリビングに向かい、ソファに座った。彼女は理由を佳世子に簡単に説明した。佳世子は怒りでリビングを歩き回った。「どういうこと?大変な思いをして子供を産んだあなたが、ゆみを苦しめるって言うの?!まともな頭がある人なら、そんなひどいこと言わないわ!あなたは言いたいことも我慢してるのに、彼は口に出さずにはいられないってわけ?」佳世子の晋太郎に対する非難に、紀美子は何も言わなかった。しばらくその場で考え込んだ後、佳世子はテーブルの上の変更協議書を手に取り、それを真っ二つに引き裂いた。佳世子はそれをゴミ箱に放り投げ、きっぱりと言った。「絶対に変更しない!彼がそうするなら、私たちも弁護士を探して彼と裁判で争いましょう!紀美子、彼はもうあなたに手加減しないわよ。あなたも少しは前を向いて!」紀美子はしばらく沈黙した後、ゆっくりとうなずいた。佳世子は前に出て言った。「紀美子、もしあのイケメンたちが気に入らないなら、吉田社長はどう?彼は晋太郎に劣らないわ。離婚して子供がいる以外は、何の問題もないんだから」「わかってる」紀美子は暗い表情で言った。「でも、私は龍介君のことを好きになることはないってわかってるの。彼に対しては、尊敬と感謝しか湧かないの」「あなたは……」佳世子はため息をついた。「まあいいわ、出かけましょう!」「何をするの?」紀美子は驚いて彼女を見つめた。「今日はすべてのことを忘れて、思う存分リラックスして、夜は酔い潰れるまで飲みましょう!」スパに到着すると、佳世子は紀美子がマッサージを受けている間に携帯を取り出し、龍介にメッセージを送った。「吉田社長、佳世子です。メッセージを見たら返信してください」3分も経たないうちに、龍介が返信してきた。「佳世子さん、どうしました?」「吉田社長、あなたはきっと有名な弁護士を知っているはずです。紀美子のために裁判を手伝ってくれる弁護士を紹介していただけませんか?」「どんな裁判ですか?」佳世子は親権変更の件を龍介に伝えた。龍介はしばらく黙ってから、返信した。「男性としての立場から言えば、彼の娘を思う気持ちは理解できます。しかし、友人としての立場から言えば、彼のやり方は確かに適切ではありません。紀美子のために弁護士を紹介します。彼女が

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