私たちの愛はここまで
「システム、ミッションの世界から解放させるようお願いします」
呼び出されたシステムは、すぐに姿を現れた。「宿主、ご申請は承認いたしました。残り半月です。この世界のご家族としっかりと別れを告げてください」
と言ったら、システムはまた目の前から消えた。伊織文香は「家族」という言葉を聞いて、しばらくの間呆然としていた。躊躇しながら、机の上に置いてある家族写真のほうを向いた。
写真に、夫と息子が愛に満ちた顔をして、彼女の両頬にキスをしている光景が写っていた。
そんな幸せな光景に、文香は少し頭がぼんやりしていた。
誰も文香は攻略ミッションの執行者だと知らなかった。
十年前、文香はシステムにこの世界へ連れられて、首都圏の御曹司・博多知輝を対象に攻略ミッションを始めた。
この十年間、二人は学生時代の出会いから白無垢の日まで辿り着いた。攻略ミッションの達成はもちろん、文香は本気で攻略対象のことを好きになったのだ。