母がいなくなった日、私は自分を取り戻した
母は怒りのあまり命を落とした。
私の結婚式は本来、私が主役となるはずだったのに、新婦が福原紀行の女性パートナーにすり替わっていたことを知ったからだ。
母が息を引き取った瞬間、私の結婚式は彼女の葬儀と化した。
それでも福原紀行は、式を予定通り続行するよう命じ、私に向かってこう言った。
「さっさと遥に指輪をはめろ。夜になったら説明してやる」
福原紀行の歯ぎしり混じりの命令を無視し、私は母の遺体を抱えたままホテルを去った。
その日の夜8時、新婦が入れ替わった結婚式は無情にも「無事」幕を閉じた。
江野遥はすぐさまツイッターに投稿し、数十万の「いいね」を獲得していた。
「ふふっ!今日はついに私の光と結ばれました。自分の立場をわきまえたあの人が去ってくれてありがとうね!」
福原紀行も続けて投稿をした。
「愛される価値のない人間には、愛する資格もない」
私は冷えきった霊安室でその投稿に「いいね」を押し、「末永くお幸せに」とコメントを残した。
その後、母の骨壺を抱えながら引っ越しの準備を進めて帰宅したのだが、新居として購入したばかりのリビングで、福原紀行と江野遥が抱き合い熱いキスをしている光景に出くわした。
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