All Chapters of 婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~: Chapter 11 - Chapter 14

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第2話・会ってみない? その7

 帰宅してから自分の為だけに食事を何も作る気になれず、自宅の近くのコンビニに立ち寄り、売れ残ったために隅に追いやられた小さなお弁当を買った。 売れ残り――私の中で結婚を意識する年齢はとっくに過ぎてしまったのに、恋人になってくれそうな男性の知り合いもいない。このお弁当はまるで私のようだと嘆きたくなった。 とぼとぼと重い足取りで家に帰ると、より一層徒労感に襲われた。もう疲れてしまった。なにもしたくない。 大好きなお風呂を沸かす気力も無く、ソファーの背もたれ部分に頭を乗せて唸った。お風呂は今日はお休みして、シャワーにしよう。 先に何か口にしようと思い、エコバックから取り出した売れ残りのお弁当を見る。正直あまり食欲はないけれど…残すのは忍びない。食べてあげなきゃ可哀想だ。まるで私だもん。 自分で自分を更に追い込むような事を思いながら、淋しいので見たくもないテレビを点けて冷めたお弁当を食べていると、傍に置いていたスマートフォンが鳴った。Love Seaからのメッセージ受信のお知らせ着信だ。――こんばんは、元気?(玄) たったひとこと、玄さんからのメールだった。彼からのメールはこれが初めて。相変わらずの愛想無い。でも今は却ってこれがいい。 ――いいえ、元気じゃないです。今、打ちひしがれてます(☍﹏⁰)。(M) お行儀悪いけれど、一人だからいいやと思って、お弁当を食べながら玄さんのメッセージに返信した。他愛もないやり取りで誰かと繋がっていると思うだけで、今は心細くて淋しいと思う気持ちが満たされる気がした。それにこの重く辛い気持ちを、誰でもいいから愚痴りたい。 そうなると、顔も知らないアプリで知り合った人というのは、今のこの状態に丁度いい人材だ。――そっか。大変だったんだな。同じだ。俺も打ちひしがれているトコ。(玄) あら。打ちひしがれ仲間?――どうしたのですか?(M)――色々あってさ。ちょっと誰かと話したい気分で声掛けた。(玄) それ、気が合う!――お仕事大変だったのですか?(M)――まあね。Mさんも仕事で嫌事あった?(玄)――うん。びっくりするほの嫌事が!(M)――俺と一緒(笑)(玄)――どんなことが?(M)――俺、飲食店やってるんだけど、新規オープンした店にお客が来なくて。結構ヤバイと思ってビラ配りに行ったら、酔っ払いに絡まれて暴
last updateLast Updated : 2025-04-20
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第2話・会ってみない? その8

  ――ジョーダンだよ。ホントは都内。Mさんの旅費、俺に請求すんのかよ(笑)(玄)――こっちだってジョーダンですから(◍•ᴗ•◍)(M)――そっか。それはよかった。じゃ、明日また頑張ろう。嫌なヤツのことは考えるだけMさんの貴重な時間が勿体ない。(玄)――そうですね。玄さん、ありがとうございます。また、メッセージしてもいいですか?(M)――モンペに攻撃されたら、愚痴聞いてやるから連絡しておいで。俺の店に飲みに来てくれるなら大歓迎(玄)――営業うまーい(*´◒`*)(M)――まあね。また今度誘うから。じゃお休み。(玄)――はい、おやすみなさい。(M) 楽しいやり取りをして、Love Seaアプリを閉じた。  玄さんのお陰で、気分が楽になった。  他愛もないやり取りにここまで心が癒されるなんて。  アプリで知り合た人なら、どんなに仕事の愚痴を言っても素性がバレて困ることもないし便利。普段だったら絶対に出来ない。だからこういったアプリの利用が急増しているのかな。 誰でも人には言えない悩みのひとつやふたつ、時にはそれ以上、抱えているもの。  玄さんって、一体どんな人なんだろう。ぶっきらぼうな感じだと思っていたけれど、意外にユーモアある人だった。会ってお喋りしてみたいな。 I.Nさんは、犬のことを話すと嬉しそうにメッセージが返ってくるから犬好きの模様。  ゆうた君とは、最初はアウトドア中心の話に盛り上がったけれど、最近は他愛もないメッセージを送り合っている。友達にメッセージを送る気軽さがあって、見ているテレビ番組の話とか、お笑いの話とか、本当に内容もない話が多いけれど、お互いそれを楽しんでいる。  Takaさんは特に食べ歩きの話が多いかな。まあ、最近Takaさんはお仕事が忙しいみたいだから、メッセージの回数は少ない。一度に長文を送ってくれるから、返信に困るから回数は少ない方が有難いと思っている。  玄さんとは初めて長くやり取りしたけれど、楽しかった。心が疲弊している時だから、余計にそう思っただけかもしれないけれど。
last updateLast Updated : 2025-04-20
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第2話・会ってみない? その9

 それから暫くは平和に過ごした。羽鳥聖也君のお母さんからの攻撃も無く日々の業務に追われた。私は年長担当なので、そろそろ八月に開催されるお泊り保育の準備や内容をしっかりと落とし込みしなくてはいけない。大体テンプレートどおり大きな予定・行事は決まっているけれど、晴天の場合のメニュー、雨天の場合のメニュー、それぞれを考えておかなくてはいけないし、やることたくさん!  それに加えて今月末からプール授業が始まる。全クラスのローテーションは組み終わっているから、園のプール準備をして、来月は七夕まつりがあるから、配布用の笹や飾り付け、景品の準備などをやる。  おまつりに出店するジュース・お茶などのドリンク販売の店、キャラクターのおめんを販売する店、くじ引きができる店、駄菓子等のお菓子を売る店、的当てやヨーヨー釣り等ができる露店、さくら幼稚園は色々な模擬店で子供たちを楽しませる。近隣住民の小学生も遊びに来てくれて(大体OBか通園の御兄弟が多いけど)お店の準備が結構大変だ。  そのため、年間で大きなイベント毎にお手伝いをしてくれるお母様を募集し、必ず一人一回はどこかのお手伝いを割り当てる。特に大変なのが七夕まつりと運動会。やってくれる人が少なくて、じゃんけんで負けたお母さんが当番に当たる。子供たちと一緒にお店を回ったり、運動会は子供たちの活躍を見たいものね。気持ちはわかる。 そして、来月の七夕まつりはお手伝いに羽鳥恵里菜さんが当番に当たっている。立候補ではなく、じゃんけんに負けたのだ。しぶしぶ仕方なくの当番なので、どんな文句を言われるかわからない。ああ。考えるだけで胃が痛い。 まあでも、今から来月の事を考えて憂鬱な気分にならなくてもいいかな。  今日はI.Nさんから、来週の日曜日にレイクタウンアウトレットの最寄り駅で午前九時に待ち合わせしよう、会えるのが楽しみ、とメッセージが入った。 もうすぐかぁ。いよいよI.Nさんと会うんだなぁ。  どんな人だろうと思っていると、もう一通メッセージが来た。I.Nさんではなさそうだ。このアイコンは…。 ――こんばんは、Mさん元気? ちょっと仕事合間に連絡してみたよー。最近食欲
last updateLast Updated : 2025-04-21
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第3話・まさかの… その1

 瞬く間に時は過ぎ、一週間なんてあっという間に経ってしまった。今日はI.Nさんとの約束の日。埼玉県越谷市まで東京都足立区から出向く。うーん、やっぱり遠い!  電車に揺られ、予め調べておいた乗り換えアプリで最短移動手段を反芻しながら、約束の十分前にレイクタウンアウトレット駅改札口へ到着。  私の目印は、白のレースのフリルトップスに、黒基調の小花柄のロングスカート、黒のサンダル、ブラウンのリボンが付いた大きめのカゴバックだと伝えてある。見れば解ると思うんだけどな。 Love Seaアプリを開いて、到着しました、と送った。I.Nさんは黒の七分丈のテーラードジャケット、白のカットソーにベージュのパンツを合わせた服装で行くと言っていた。お洒落カジュアルな感じかな。どんな人なのか、待ち合わせの時間が刻一刻と迫る度に、ドキドキと胸が高鳴る。 初めて会う人だけれど、自撮りの写真通り素敵な人なのかな?  犬好きみたいだけれど、会話、ちゃんとついていけるかな?  幼稚園ではパンツルックが多いからあまりお洒落できないし、初対面の人と会うのだからと、今日は張り切ってタンスから洋服引っ張り出して、お洒落したけれど、変に思われないかな? 緊張しながら待つ事十五分。「あの、すみません」 きた――!  「この駅に行きたいのですが、乗り換えが解らなくて、教えて頂いてもいいですか?」 声を掛けて来たのは、初老の男性だった。まさかこの人がI.Nさん――なワケないか。乗り換え方法聞いているもんね。「はい」 見せられた地図を見て、乗り換えの為に降りる駅を教えると、どうもありがとう、と会釈された。  なんか拍子抜け。 そしてまた緊張感を持って待つ。待つ。待つ。  三十分待った。  でも、彼は現れない。 四十分。  五十分。  一時間…。 その間にLove Seaアプリで何度かメッセージを送ったけれど、返事がない。なにかあったのかな? 午前十時を過ぎたので、I.Nさん
last updateLast Updated : 2025-04-21
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