投稿してから一分も経たないうちに、大量のファンから「いいね」やコメントが殺到した。【どうしたの、茜ちゃん?何かあったの?】【誰かにいじめられたの?教えてよ!私たちが守ってあげる!】【怖がらないで、ずっと応援してるから!】……心配と励ましの言葉が並ぶ画面を見て、藤村茜はようやく少し落ち着きを取り戻した。最悪の事態にはまだなっていない。彼女には百万人のファンがいるのだ。茜は数人のコメントに散らばりながら返信を打った。【彼氏が浮気して……その女に命を脅かされて別れさせられたの】【彼氏の子供を妊娠したのに、あの女に迫られて中絶しろって……】【今はこの子が私の全て。同じ血が流れてるのに、彼は冷たいけど、私は……この子を失いたくない】【どうしよう……本当に怖くて……】事実を捻じ曲げた泣き落としも、茜は平然と綴っていた。ファンたちは怒りに震え、彼女を慰めながら「最低な男」と罵倒し始める。元々ネットで人気を博し、MVのヒロインとしてブレイクした彼女のファン層には、経済力のある者も少なくなかった。あるお金持ちの恋愛脳ファンが即座にコメントした。【ちょうど今日橋寧区に行く予定だった。俺が守るから、誰も茜ちゃんに手出しさせない】その下には【私も行く!俺も加わる!】と賛同の声が次々と並んだ。ほどなくして、茜のマンションの下が騒がしくなる。ベランダから身を乗り出して見下ろせば、黒山の人だかりができていた。ファンの一人が彼女の姿を見つけ、手を振る。次の瞬間、彼女のスマホが震えた。金持ちファンからのDMが届いている。【家でゆっくりしてて。外は俺たちが張り込んでるから安心しろ。ストレスで体に障ったら元も子もないだろ】その文面と、入口を塞ぎきった人混みを見比べながら、茜は満足げに唇を緩めた。【ありがとう。茜、みんなを頼りにしてるから……】返信を送ってから三十分も経たないうちに、マンション前の路上にマイバッハが停車した。和也がエンジンを切り降り立つと、この騒動を嘲笑うように薄く笑った。茜のSNSでの道化芝居は把握していたが、ここまで思考停止のファンが集まるとは予想外だった。険しい表情で人垣を掻き分けようとした瞬間、二人のファンに遮られた。「折原さん……『唯』歌ってた折原和也さん?」片
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