万尋のデスクにインスタント写真立てだった。中には、二人の少女が無邪気に笑っている。一人はどことなく万尋に似ていて、もう一人は花梨と受付嬢を足して二で割ったような顔立ちをしていた。「きっと、社長の恋人か家族なんだろうな」彼らは口には出さずとも、同じことを思った。「座れ」万尋は、酒の匂いをまとったまま、眉をひそめてソファに腰を下ろした。どうやら食事会から戻ったばかりのようだった。「入社する気があるなら、受付で手続きを済ませろ。後で担当者が仕事を教える。給与は試用期間の基準で支払う。納得したら契約書にサインしろ」この三年間、万尋は真希に似た顔の女性を見かけるたび、できるだけ傍に置くようにしてきた。だが、彼女たちに手を出すことは決してなかった。ただ、空昭寺の住持が言ったのだ。「人に善を施して、欲を断って、怒りを戒めて、心に想う者のために日夜経を唱えれば、その者が来世において安らかに転生する助けとなります」と。万尋は、忠実にそれを守り続けた。真希に似た顔を目にするたび、まるで彼女がまだ傍にいるかのような錯覚に陥った。それだけで、夜ごと襲いくる悪夢に苛まれずに済む気がした。世間が自分をどう噂しているかなど、興味がなかった。なぜなら、こういう思っていた。真希が死んだ日、空は晴れ渡っていた。それ以来、帝都の空は一度も晴れることはなかった。太陽はいつも厚い雲に隠れ、空気を覆う靄が霧なのか、それとも汚れた大気なのかすら分からないまま、彼の世界を灰色に染め続けていた。息ができない。まるで溺れているように、絶えず苦しさが付きまとっていた。脳裏には、あの日の祐人の真っ赤に充血した目が、警告灯のように点滅していた。江茉が涙ながらに「お兄ちゃん、どうして助けてくれなかったの?」と訴える夢を何度も見た。真希が膨れた体で水面に浮かびながら、「新婚おめでとう、幸せになってね」と微笑む悪夢にも、何度も苛まれた。悔恨と痛みが炎のように、昼も夜も彼を焼き尽いている。結局、眠れなかった。疲れた表情で煙草に火をつけ、窓の外を見つめた。この街のどこかに、自分の帰る場所はあるのかと思った。家族とは絶縁し、京香とも離婚した今、万尋に行くあてはなかった。彼が戻ってきたのは、真希と一緒に暮らすために買ったこ
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