千桜との関係があるせいか、紗雪の日向に対する印象はさらに良くなっていた。「そろそろいい時間だし、今日はこれくらいにしておきましょうか」紗雪は日向を見ながらそう言った。すでに午後いっぱいをショッピングに費やしていたし、まだ他の予定も残っている。日向一人にばかり時間を使うわけにもいかない。日向は頷いた。「そうだね。今日は本当にありがとう。また次の機会にでも一緒に出かけよう」「いいのよ、そんなの。千桜ちゃんが楽しんでくれたなら、それで十分」紗雪は笑いながら千桜を見つめた。この小さな女の子を、本当に可愛くて仕方がないと思っていた。日向は千桜に目を向け、優しい声で言った。「千桜、お姉さんにバイバイしようね」けれど千桜はじっと紗雪を見つめたまま、何も言わなかった。ぱちぱちと瞬きをする大きな瞳は、まるで精巧な人形のように美しかった。日向は促し続ける。「ちゃんとご挨拶しないとだめだろ。お姉さんには、いっぱいお世話になったんだから」紗雪は「いいのよ」と言って、軽く手を振った。「大丈夫大丈夫。気持ちはちゃんとわかってるから。千桜ちゃんが楽しんでくれたなら、それでいいわ」二人ともすでに諦めかけていた。そろそろ車に戻ろうかというそのとき、千桜がふいに、ぽつりと口を開いた。「......お姉ちゃん、ありがとう」その瞬間、日向と紗雪は目を見合わせ、驚きに目を見開いた。日向にとっても信じられないことだった。というのも、これまでどんなに家族が声をかけても、千桜は口を開こうとしなかったのだ。今回も、紗雪に挨拶させようとは思っていたものの、正直期待はしていなかった。紗雪もまた、驚きと喜びの入り混じった表情を浮かべ、瞳がぱっと輝いた。「千桜ちゃん、えらいよ」「今度お兄さんと一緒に来たときは、前に好きだって言ってたあのプリン、一緒に食べに行こう?」千桜はもうそれ以上は何も言わず、ただぎゅっと日向の首にしがみついた。でも、二人とも無理にはさせなかった。なにせ今の一言だけでも、十分に驚きだったから。「じゃあ、私はこれで帰るね」紗雪は日向に別れを告げ、軽く手を振ってその場を後にした。日向は頷き、その背中を見送りながら、ふと物思いにふけった。......紗雪が帰宅したとき、家
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