時々、浅野時生が私を誘惑しているんじゃないかと疑うが、証拠はなかった。例えば今、浅野時生はレジャーウェアで、私にコーヒーを作ってくれていた。柔らかい綿の白いTシャツにグレーのパンツ、まるで男子大学生のようだった。いや、彼は確かに大学を卒業したばかりだった。なんて青春なんだろう、私はソファに寝転がって感心していた。そのお尻、その腰。うーん、本当に心地よかった。男モデルを囲いたくなる気持ちもわかるようになった。浅野時生がコーヒーを持ってやってきたので、私は急に真面目な顔をして雑誌を読むふりをした。コーヒーを受け取り、一口飲んだ。浅野時生が座った途端、綿菓子が彼の膝の上に飛び乗った。私の視線はそれに引き寄せられ、綿菓子が浅野時生のグレーのパンツの上で踏む様子を見ていた。待って......グレーのパンツ?私の視線はついある一点に集中してしまった。「でっか......」浅野時生が私の耳元に寄り添い、息が耳朶をかすめた。「紗奈、どこ見てる?」耳がくすぐったくて、呼吸が一瞬止まった。目はあちこち彷徨った。「あのう、猫が大きくなったって言っただけ......」私は顔を赤らめて部屋に逃げ込んだ。親友にメッセージを送った。【時生が私のとこに住み始めてからさ、毎日私を誘惑してる気がするんだけど、私も男を探した方がいいのかな?】親友は興奮して電話をかけてきた。「やっと目覚めたのね!あんなイケメンが長年君のことを好きだったのに、今頃気づいたの?」私は心が乱れた。「彼が、私のことが好きなの?ずっと姉だと思ってたのに......」胸に手を当てた。なぜか喜びが湧き上がってきた。「当たり前じゃん。周りから見れば彼が君を好きなのは明らかよ。君の前では子猫みたいに振る舞ってるけど、外では不機嫌そうな狼みたいでみんな怖がってるわよ。どう?離婚したんだし、あいつのこと考えてみたら?あのクズ男よりずっといいわよ」「今は心が乱れてるの。会社のことで手一杯だし、他のことは考えたくない」慌てて親友の電話を切り、別の電話がかかってきた。電話に出ると、風間敦だった。「紗奈、凪が熱を出して、君を呼んでるんだ。帰ってきて見てくれないか」電話の向こうの声は懇願するような響きがあった。私はバルコニーに
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