社長令嬢、インターン生活は波乱の幕開け! のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 14

14 チャプター

第11話

やっぱり考えすぎだったみたいだ。 ゼネラルマネージャーはただ会社を代表してインターンにお祝いの言葉を届けに来ただけで、いわゆる形式的な挨拶をしにきたのだ。 「白石絵理は誰だ?」 彼が部屋に入るなり、ストレートに問いかける。 突然名前を呼ばれ、状況が飲み込めていない白石は戸惑いながらも一歩前に出た。 「……私です」 「企画書、見せてもらった。なかなか良くできていたな。期待しているぞ」 「ありがとうございます!」 ……いつから、企画を盗むような人間がこんなに簡単に称賛されるようになったのだろう? 「で、そっちの彼女は?」 ゼネラルマネージャーは私を一瞥すると、部長に視線を移した。 部長は軽く咳払いをして、私のことを説明し始める。 「この従業員は、インターン期間中に個人的な問題を起こし、それが原因で社内に悪い噂が広まりました。その上、企画書も期限内に提出せず、結果としてインターンを通過できませんでした。それなのに、先ほどから騒ぎを起こしておりまして……」 ゼネラルマネージャーは厳しい表情を崩さずに言った。 「若いなら、これからいくらでもチャンスはあるだろう」 ……でも、私はそんな言葉で納得するわけにはいかなかった。 「それじゃあ、もし今ここで企画書を提出したらどうなるんですか?」 私が今まで提出しなかったのは、部長と白石がいる以上、企画書を出しても絶対に握り潰されると分かっていたからだ。 ゼネラルマネージャーは眉をしかめた。 「もう完成しているのに、なぜ期限内に出さなかった?今さら出したところで無駄だ」 その時だった。 ゼネラルマネージャーの秘書が慌てた様子で部屋に駆け込んできた。 「ゼネラルマネージャー、大変です!先ほど使われた企画書に小数点の記載ミスがありました。幸い早めに発見できましたが、もし気づかなければ会社に数億円の損失が出ていた可能性があります!」 「何だと?」 ゼネラルマネージャーは目を鋭く光らせ、怒りの視線を白石に向けた。 「おい白石、提出する前に確認しなかったのか?」 「わ、私……」 白石は動揺しながらも、すぐに責任を私に押し付けようとした。 「この企画書は桐生さんが作ったものです。私は彼女を信頼して、内容を確認せずそのまま提出しただけなんです
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第12話

「今、一番大事なのは、この問題をどう補うかを考えることだと思います」 そう言って、私は冷静に言葉を続けた。 「ここにもう一つ、別の企画案があります。よかったらゼネラルマネージャーにぜひ見ていただきたいです。もし出来が悪いと判断されたら、その時はすぐにここを去ります。文句は一切ありません」 そう言いながら、私は持参したUSBメモリをパソコンに差し込んだ。 すると、部長が険しい表情で私を止めようとする。 眉間に皺を寄せながら、怒りを込めた声で言い放った。 「おい桐生!ここを何だと思ってるんだ?みんなの時間を無駄にするつもりか!」 「やらせてみろ」 ゼネラルマネージャーは淡々とした口調で言い、会議室のテーブル席に腰を下ろした。 「彼女がどれほどのものか、ちょっと見せてもらおうじゃないか」 実はこの企画案、父の助言を受けて完成させたものだった。 今朝出勤前に父に見せたときも、彼は珍しく満足そうに頷いてくれた。 だから私は自信があった。 数枚のスライドを投影し終えると、会議室はしんと静まり返った。 この企画案には、深いビジネスの洞察や分析が盛り込まれていて、白石の企画書とは比較にならないほどのクオリティだった。 「これ……全部お前が書いたのか?」 ゼネラルマネージャーが静かな声でそう聞いてきた。 その目は鋭く、私を見据えている。 私が答える前に、部長が横からパソコンを閉じ、苛立った様子で遮った。 「こいつにそんな能力があるはずがない。どうせネットからパクってきたんだろう!桐生、お前、よくもこんな丸パクリの企画書を持ち込んできたな!」 私は部長の言葉には一切反応せず、ゼネラルマネージャーに真剣な表情で問いかけた。 「この企画書、どう評価されますか?」 ゼネラルマネージャーは一瞬考え込み、そして深い声で答えた。 「視点が新しく、どの課題に対しても分析が深い。さらに、独自の解釈がしっかりしている。こんな良い企画書は久しぶりに見た」 その言葉を聞いた瞬間、部長と白石の顔が真っ青になるのが分かった。 だが、次の瞬間、部長がゼネラルマネージャーに耳打ちを始めた。 内容までは聞こえなかったが、それを聞いたゼネラルマネージャーの顔色が急変した。 部長は勝ち誇ったような表情で私を見つめ、
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第13話

「さて、一体誰が会社で騒ぎを起こしているんだ?」 父が威風堂々と会議室の中央に立ち、鋭い目で一同を見回した。 部長はすぐさま彼に歩み寄り、ペコペコと頭を下げながら口を開いた。 「ただのインターンを通過できなかった小娘です!プライベートが乱れていて、同僚を陥れ、挙げ句の果てに会社に数千万円もの損害を与えかけたんですよ!そんな『育ちの悪い』人間、うちの会社に残す価値なんてありません!」 「育ちの悪い?」 部長は、まさか目の前にいるのが私の父だとは気づかず、社長が味方であると信じ切っているのか、ますます調子に乗って私を侮辱する言葉を並べ立てた。 だがその言葉を最後まで言い終わる前に、父の手が彼の顔を思い切り打ち据えた。 「誰に許可をもらって、俺の娘を侮辱しているんだ?」 この一撃で、部長は呆然と立ち尽くした。 それを見て、会議室にいた全員の空気が一気に凍りついた。 ゼネラルマネージャーも他の社員たちも、ただ茫然と父の怒りの様子を見守るしかなかった。 「えっ……え?社長の娘って、白石絵理じゃなかったんですか?」 「そ、そんなはず……」 部長は頬を押さえながら困惑した様子で、私と白石を交互に見つめる。 その動揺を無視するかのように、父はさらにもう一撃を見舞った。 「自分の娘を間違えるわけがないだろうが!」 部長は「うっ……!」と声を上げてその場に倒れ込み、呆然とするしかなかった。 誰もが驚愕していた。 これまでチヤホヤされていた白石が実は偽物で、蔑まれ、噂話の標的にされていた私こそが、本物の社長令嬢だと知ったのだから。 「俺が娘のために車を出して迎えに行かせた。それを勝手に『愛人付き』だと噂を流し、挙げ句に彼女の企画書まで盗むとはどういうことだ?」 父は静かだが冷たい怒りを込めて続ける。 「今日限りでお前は部長をクビだ。それから、このデマに関しては法的責任も追及する!」 父の一言一言が、まるで湖に大きな石を投げ込んだかのように波紋を広げていった。 会議室の空気はピリピリと張り詰め、全員が身じろぎもできないほどの緊張感に包まれた。 その時、真っ先に動いたのは白石だった。 彼女は涙を浮かべながら私の前に歩み寄る。 「桐生さん、本当にごめんなさい!これまでのことは私が悪かったの。
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第14話

結局、部長は会社をクビになり、白石も複数の男性と関係を持っていた事実が暴露された。 彼女が身につけていたあの「高級ブランド品」とやらは、すべて彼女のスポンサーである中年男性たちから買い与えられたものだった。 さらに、白石の取り巻きとして媚びへつらっていたインターンたちも、最終的に誰一人として実習を通過できず、そのまま会社を追い出される結果となった。 そして、藤沢が荷物をまとめて会社を去ったその日、ちょうど私は新しい部長としての任命を受け、デスクに就いたところだった。 彼女がダンボールを抱えながら肩を落として歩き去る姿を見つめ、私はなんとも言えない感慨を覚える。 ——自業自得とは、まさにこのことだ。 この世の中、欲に目がくらむのではなく、もっと純粋で揺るぎない心を持つべきだ。 そうすれば、きっともっと違う道が開けたかもしれないのに……
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