中央広場の電子スクリーンが突然ハッキングされ、黒い服を着た仮面の男が映し出された。「これからネットでゲームを開催します。ぜひ皆さんの参加をお待ちしております」変声機のおかげで、その声は冷たく響いていた。人々は好奇心から足を止めて、次に何を言うのか待っていた。私もつい立ち止まってしまった。「ゲームのタイトルは、『橘やすしを殺した犯人は誰だ?』」「何人かの容疑者の情報を公開するので、皆さんの投票で犯人を選んでください」スクリーンに映る男が掲げているボードを見て、私は一瞬頭が真っ白になった。私の名前は橘やすし。そして、私はもう確実に死んでいる。ただ、お墓の近くで会ったあの古い幽霊が言うには、私にはまだ未練があって、転生できないらしい。死んだ理由なんて、もう全然覚えていない。「今夜9時に、最初の容疑者の情報を公開します」そう言い残して、黒い服の男はすぐ映像を切った。気になった私は、夜9時にネットカフェへ行ってみた。案の定、そこでは大勢の人が配信を見ていて、視聴者数はかなり多かった。配信タイトルはまだSNSの初期設定のまま、画面には昼間スクリーンに映っていたあの黒い服の男が座っていた。「今から最初の容疑者を発表します。名前は段野久素と言います」男がA4用紙の束をカメラに見せると、一番上には段野の証明写真があった。その顔、どこかで見たことがあるような気がする、でも何も思い出せない。「彼の住所は山水町1丁目88番地です」配信の視聴者数はどんどん増えて、たった10分で600万人を超えた。「配信者さん、橘やすしはどうやって死んだの?」コメント欄にそんな質問が流れてきた。この質問の答えは、私も知りたかった。私はいったいどうやって死んだんだろう?でも黒い服の男はその質問には答えず、別のパソコンから動画を再生した。「このクソ女!嫁に行かないって?俺が何年も面倒みてきた恩を忘れたのか!」動画の中で、段野が女性の髪をつかんで、地面から引きずり起こして田舎の自宅に連れ込んでいた。監視カメラは家の軒先に取り付けられていて、家の中の音まで鮮明に聞こえてくる。ひどい悲鳴が響いてきて、思わず身震いするほどだった。「逃げるな!逃げられると思うな!嫁にならないなら、無理やりでも嫁にしてやる
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