All Chapters of これで君と別れ、会えぬ日々へ: Chapter 11 - Chapter 14

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第11話

輝也は床に散らばった診断書を拾い上げた。 それは、莉奈が彼に残した唯一の手がかりだった。 彼は彼女を見つけ出し、全てを謝罪するつもりだった。 診断書には、莉奈の署名と病院の印が押されていた。 文書は偽造できても、印章は偽造できない。 彼はそれが市立病院のものであることに気づいた。 彼女は、その病院に知り合いがいなかったはずだが、わずかな希望を胸に車を走らせた。 「すみません、最近莉奈という名前の患者がこちらに来ていませんか?」 受付にいた村上は彼を一瞥すると、首を横に振った。 「申し訳ありませんが、患者のプライバシーのため、そのような情報はお伝えできません」 「くそっ!」 輝也は小声でそういうと、焦りが募る中で頭を抱えた。 その時、近くにいた白衣の医師が村上さんに話しかけた。 「村上さん、2-21の患者、加藤さんのカルテはもう破棄しておいてください。亡くなったので、必要ありません」 その言葉を聞いた瞬間、輝也は医師の腕を掴んだ。 「今、加藤と言いましたか?」 彼はポケットからスマートフォンを取り出し、写真を見せた。 「この人ですか?彼女の名前は莉奈ですか?」 医師は彼を怪訝そうに見ながら答えた。 「どうしてその名前を知っているんですか?あなたは彼女の何ですか?」 「私は彼女の夫です!」 輝也の目に一筋の光が宿り、懇願するように続けた。 「先生、どうか彼女に会わせてください!謝らなければいけないんです!」 医師は複雑な表情を浮かべながら首を振った。 「遅かったですね」 「遅い?どういうことですか?」 輝也は愕然とした表情で問い返した。 医師は眉をひそめて答えた。 「どういう意味も何も、そのままです」 「彼女はもういません」 輝也は諦めきれずにさらに聞いた。「いなくなった?どこへ行ったんですか?」 医師はすでに忍耐の限界だった。「本当に彼女の夫なんですか?それともわざと話を理解できないふりをしているんですか?」 「私が言いたいのは、彼女がもう亡くなったということです!」
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第12話

「どういうことですか?」 輝也の目には怒りが燃え上がった。 「医師として、根拠のないことをどうして言えるんですか?」 「妻はつい最近まで元気だったんですよ。それなのに亡くなったなんて、あり得ない!」 「村上さん」医師は振り返り、当直の看護師に声をかけた。「莉奈さんのカルテを出してください」 「はい」 看護師はすぐに莉奈の診療記録を印刷してきた。 「こちらをご覧ください」 医師はため息をつきながら輝也に記録を差し出した。 「莉奈さんの病気がわかった時には、すでにかなり進行していました」 「診断された時点で末期でした。その後の治療は、苦痛を少しでも和らげて、安らかに旅立てるようにするのが精一杯だったんです」 「それにしても、ご主人のあなたが、奥さんが亡くなってから来るなんて......」 医師の言葉は、輝也の耳にはもう届いていなかった。頭の中にはただ一つの単語だけが響いていた。 莉奈が......死んだ。 医師が話し終わる前に、輝也は突然崩れ落ち、そのまま床に倒れた。 「誰か来て!大変です!」
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第13話

輝也が目を覚ました時、ベッドのそばには若い看護師が一人立っていた。 「あなたは、本当に莉奈さんのご主人ですか?」 彼が目を覚ましたのを見て、看護師が声をかけた。その視線は少し厳しかった。 「......そうです」 声はひどく枯れていて、言葉を発した瞬間、涙がとめどなく流れた。 莉奈......彼の大切な莉奈は、ここで一人で、誰にも看取られずこの世を去ったのだ。 その時、自分はさくらと抱き合い、ベッドで愛欲に溺れていた――。 胸の奥に激しい痛みが走り、彼は嗚咽を漏らしながら尋ねた。 「莉奈の......葬儀はどうなったんですか?彼女は......どこに眠っているんですか?」 「莉奈さんの葬儀はすでに済んでいます」看護師は彼をちらりと見て答えた。「ですが、どこに埋葬されたかは私にもわかりません」 「莉奈さんが『誰にも邪魔されたくない』とおっしゃっていたので......」 「遺言は?」輝也は諦めきれずに聞いた。「俺に何か言い残していませんか?」 「ありません」看護師は首を振った後、少し躊躇しながら彼にスマートフォンを差し出した。 「これが莉奈さんの遺品です。これだけしかありません」 「本当は焼却してほしいと頼まれていましたが、私は、彼女がこの世に何一つ痕跡を残さずに去ってしまうのがあまりにも悲しくて......」 「それではあまりにも寂しいじゃないですか......」 輝也は震える手でスマートフォンを受け取り、電源を入れた。その瞬間、「ピンポン」と通知音が何度も鳴り響いた。 一番新しいメッセージは、さくらからのものだった。 「田中家から追い出されたんだって?やっと自分の立場がわかったのね。だって今、輝也が愛しているのは私なんだから。あんたみたいな色あせた女なんて、とっくに忘れられてるのよ」 輝也のこめかみには怒りで血管が浮き出た。その表情は、怒り狂った獣のように険しく歪んでいた。 知らなかった。――さくらが陰で、こんな風に莉奈を侮辱していたなんて! 輝也はメッセージを次々にスクロールした。次から次へと、目を背けたくなるような言葉や写真が画面に表示された。 莉奈が病の痛みに苦しんでいたその夜、さくらはこん
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第14話

看護師が莉奈のスマートフォンを男に渡した瞬間、その顔に浮かんだのは、まるで殺人者のような凶暴な表情だった。 その迫力に、看護師は思わず息を呑んだ。 だが、次の瞬間には彼の表情は穏やかになり、笑顔を作って礼を言った。 「ありがとうございます」 「用事がありますので、これで失礼します。費用は後ほど必ず支払います」 そう言い残し、彼は病院を出ていった。その動きは風のように素早かった。 輝也は車を走らせ、さくらの自宅へ向かった。 驚くほど冷静な自分に驚きながら、さくらに電話をかけた。 「もしもし?今どこにいる?」 さくらの甘い声が受話器から聞こえた。 「家よ。あなた、私に会いに来るの?待ってるわね〜」 彼は無言で電話を切り、唇には狂気じみた笑みを浮かべた。 アパートのインターホンを鳴らすと、さくらは嬉しそうにドアを開けた。 「輝也?来るのを待ってたわ......」 だが、次の瞬間、彼女の顔には驚愕の表情が浮かんだ。 腹部に鋭い痛みを感じ、彼女は恐る恐る視線を下ろした。そこには果物ナイフが深々と突き刺さっていた。 「な......なぜ......」 目を大きく見開いた彼女の体からは、鮮血が床に滴り落ちた。 「お前には罪がある」 輝也の声は冷たく、感情のかけらも感じられなかった。 さくらはその場に崩れ落ちた。理解できなかった。 どうして? 昨日まで甘い言葉をささやいてくれた人が、急にこんな態度を取るの? お腹の中には、彼との子どもがいるのに...... 彼女は必死に輝也のズボンの裾を掴んだ「赤ちゃん......お腹にあなたの子供がいるのよ......」 だが彼は冷酷にも、もう一度ナイフを振り下ろした。 「その子供も罪の産物だ。生かしておくわけにはいかない」 彼女が力尽きるまで、輝也は容赦しなかった。 彼女が動かなくなると、彼はようやくナイフを置き、低い声で語りかけた。 「知っているか?莉奈は死んだんだ」 「彼女は一人で、病院で孤独に息を引き取った」 「その時、お前は何をしていた?」 「お前は彼女に、俺たちのベッドでの写真を送りつけていたんだ」 「だからお前は死ぬべきなん
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