輝也は床に散らばった診断書を拾い上げた。 それは、莉奈が彼に残した唯一の手がかりだった。 彼は彼女を見つけ出し、全てを謝罪するつもりだった。 診断書には、莉奈の署名と病院の印が押されていた。 文書は偽造できても、印章は偽造できない。 彼はそれが市立病院のものであることに気づいた。 彼女は、その病院に知り合いがいなかったはずだが、わずかな希望を胸に車を走らせた。 「すみません、最近莉奈という名前の患者がこちらに来ていませんか?」 受付にいた村上は彼を一瞥すると、首を横に振った。 「申し訳ありませんが、患者のプライバシーのため、そのような情報はお伝えできません」 「くそっ!」 輝也は小声でそういうと、焦りが募る中で頭を抱えた。 その時、近くにいた白衣の医師が村上さんに話しかけた。 「村上さん、2-21の患者、加藤さんのカルテはもう破棄しておいてください。亡くなったので、必要ありません」 その言葉を聞いた瞬間、輝也は医師の腕を掴んだ。 「今、加藤と言いましたか?」 彼はポケットからスマートフォンを取り出し、写真を見せた。 「この人ですか?彼女の名前は莉奈ですか?」 医師は彼を怪訝そうに見ながら答えた。 「どうしてその名前を知っているんですか?あなたは彼女の何ですか?」 「私は彼女の夫です!」 輝也の目に一筋の光が宿り、懇願するように続けた。 「先生、どうか彼女に会わせてください!謝らなければいけないんです!」 医師は複雑な表情を浮かべながら首を振った。 「遅かったですね」 「遅い?どういうことですか?」 輝也は愕然とした表情で問い返した。 医師は眉をひそめて答えた。 「どういう意味も何も、そのままです」 「彼女はもういません」 輝也は諦めきれずにさらに聞いた。「いなくなった?どこへ行ったんですか?」 医師はすでに忍耐の限界だった。「本当に彼女の夫なんですか?それともわざと話を理解できないふりをしているんですか?」 「私が言いたいのは、彼女がもう亡くなったということです!」
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