顧客訪問中の私に、夫から電話がかかってきた。コール音が鳴り止むと同時に、彼の抑えきれない怒気が、受話器越しに伝わってきた。「彩乃!母さんに物を買ってきてもらうなって言っただろ?あんな歳なのに、こき使うなよ!」「今度も、あのくそパンがそんなに食べたいなら、自分で買いに行けばいいだろ!どんだけ食いしん坊なんだよ?食べないと死ぬのかよ?」「母さんは苦労して僕を育ててくれたんだ。君が家政婦みたいに使うためじゃない!彩乃、もう無理だって言うなら離婚だ!さっさと母さんを迎えに行ってこい!」佐倉亮太は、最後の言葉をほぼ怒鳴り声で吐き捨てた。私への堪忍袋の緒が、ついに切れたようだった。結婚当初の彼は、本当に優しかった。給料は全額私に預けてくれて、何事もちゃんと返事をしてくれ、よく小さなサプライズで私を喜ばせてくれたのに。それは、姑は田舎暮らしの寂しさを口実に引っ越してきたまでだ。本当のところは不倫相手との逢瀬をもっと自由に楽しむためだった。姑と同居を始めてから、すべてが変わってしまった。佐倉亮太が全額の給料を私に渡しているのを見て、姑は露骨に不機嫌になった。「お母さんはまだ生きてるのに、もう給料全部嫁に渡すわけ?本当に嫁が出来たら親を忘れるのね!もう、この息子を育てた甲斐がなかったわ!」こうして、家計の主導権はすべて姑の手に握られてしまった。佐倉亮太が私に小さなサプライズを用意してくれるのを見て、姑は抑えきれない嫉妬を、嫌味ったらしく言葉にした。「もう結婚したんだから、そんな無駄なことしなくていいでしょ?本当に暇ならさっさと息子産んで、孫を抱かせてちょうだい」姑の言葉に、佐倉亮太は肩身の狭い思いをして、サプライズを用意することもできなくなってしまった。姑は不倫相手にもらったただの道端の花に大喜びしていたくせに。その件で、SNSだけで十数件も投稿してたのに、よく私たちの事を無駄遣い呼ばわりできるものだ。どう考えたって、息子から大切にされてる嫁への嫉妬じゃないか。それに加えて、姑は事あるごとに佐倉亮太に私の悪口を吹き込んでいた。元々佐倉亮太と築き上げてきた、穏やかで幸せな二人だけの世界は、こうして姑によって壊されてしまった。姑の絶え間ない挑発のせいで、佐倉亮太との間には深い溝ができてしまい、喧嘩が絶えなくな
Last Updated : 2024-12-17 Read more