「ギイッ」という音とともにドアが開き、唯さんは目を真っ赤に腫らして入ってきた。何も言わず、静かに骨壺を置くと、そのまま部屋を出て行った。私は不安になり、唯さんの後を追う。外はカンカン照りの太陽、私の手に光が差し込むが、暖かさを感じることはできない。唯さんは急に走り出した。多分、感情を抑えきれず、全力で走っているのだろう。私は幽霊だから疲れない。彼女が息を切らしても、私は平然とついていける。唯さんはボロボロになって部屋へ戻り、布団をかぶってまた泣き出した。「もう泣かないで、唯さん。あなたはこの数日で、どれだけ涙を流すの……」私の言葉は届かず、彼女は声を殺して啜り泣いている。「ごめんね、私はもういないけど、あなたは生きていかなきゃ。あなたの夢に入れたらいいのに。ドラマみたいに恨めしい幽霊になれたら、こんな奴らすぐに成敗できるのに、現実はそうもいかない……」そうぼやきながら、唯さんの背中に触れようとした瞬間、奇妙な力が私を引きずり込み、いつの間にか唯さんの身体の中へ吸い込まれたような感覚がした。目の前の景色が変わり、気づけば唯さんと「私」がテーブルでご飯を食べている光景へと移動した。――これは過去、私が初めて給料をもらって唯さんに御馳走した日の記憶だ。どうやら唯さんの夢の中らしい。私はかつての自分の隣に立ち、肩に触れると、私の魂は夢の中の「私」に同化した。目の前には涙をこぼしながら私を見る唯さん。「姉さん、私はもう死んだ。そろそろ気持ちを楽にして」唯さんはハッと私の言葉に反応する。「莉子ちゃん、あなたなのね……」私は頷いて、唯さんの手の甲をそっと叩いた。「ここ数日、私の魂はずっとあなたの側にいた。だから全部知ってるよ」「ごめん……ごめんね、莉子ちゃん……」唯さんが泣きながら謝ると、私も胸が詰まる。涙が自然と頬を伝う。「唯さん、あなたのせいじゃない。あんな家庭にいた私は、どのみち長くは持たなかったと思う。お願いだから、あの八角夫婦なんて相手にしないで。あんな人たちのために命や時間を費やすなんて馬鹿らしい」唯さんは苦渋の表情だが、必死に頷く。「わかった、あなたの言う通りにする」「実は、唯さんに内緒で誕生日プレゼントを買っておいたの。あなたのクローゼットの中の棚を見てね。
Last Updated : 2024-12-13 Read more