これのどこが葬式だろう。死んでもなお、姉を解放してやれないのか。涙で顔を濡らしながら、次々と部屋に入っていく独り者たちを見つめていると、異様に飾り立てられた部屋に入っていく彼らの姿に、背筋が凍るのを感じた。「こりゃたまらねぇ。生きてるみてえだ」村の五十男の吉田が真っ先に部屋に入った。出てきた時、舌なめずりをしながら、札束を父の手に押し付けた。「そりゃそうよ。毎晩薬湯に浸からせたのも、死んでからも瑞々しい体になるためだもの」母は声高に言った。周りの連中に聞こえるように。吉田が最初の客となって以来、他の独り者たちもそわそわし始めた。父と母は焦る様子もなく、入り口に腰掛けて、不気味な笑みを浮かべながら客たちを待っていた。きっと、奴らは我慢できないはず。だって両親は、奴らの食事に薬を紛れ込ませた。量は少なめだが、効き目は確かなもの。「くそ、我慢できねぇ」二人目、三人目と、欲望に目を潰された連中は、姉が死体だということすら気にも留めなかった。三日経っても、姉の部屋への列は途切れなかった。こっそり部屋を覗いてみると、死んでから三日とは思えないほど姉は美しかった。頬は桜色に染まり、肌は雪のように白く、むしろ生前より艶やかになっていた。けれど、姉の姿が異様に変わっていくほど、私の心は恐怖に蝕まれていった。だって、姉が毎日強いられてきた薬湯に、次は私が......「みさき、湯加減がちょうどいいわよ。早くお入りなさい」母がこんな甘ったるい声を出すときは、決して良いことがない。まるで、姉の薬湯を手伝わせた時と同じ声色。「嫌です......怖いです」私は首を振った。バチン!母の平手が頬を打った。「図に乗るんじゃないよ。お前みたいな役立たずが、ご飯食べて屁こいて無駄飯食らってばかりで。恩返しの一つもできないってのかい」「嫌!姉さんみたいになりたくない!」私は頬を押さえて泣き叫んだ。「お前の望みなんか知ったことか。大人しく聞かないと、お父さんの鉄拳で分からせてやるからね」母の目が鋭く光った。玄関に立て掛けてある父の鉄の棒を思い出し、思わず体が震えた。あれで叩かれると骨まで痺れる。まだ生々しい傷跡に触れた。言うことを聞かなければ、もっと早く死ぬことになる。どっちみち死ぬなら..
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